村上 里絵 先生

育児に悩むママへ「一人じゃないよ」

平成18年4月3日

思い起こせば今から約4年前、娘を出産した頃、私もなんともいえぬ孤独感を感じておりました。一日中、授乳、オムツ替え、洗濯のくり返し。その上夜中も授乳の為十分に眠ることができず、何もかもマイナスに考えてしまいがちで、「育児がこんなに辛いなんて...」と一人でシクシク泣いた事もありました。でも、ずっとこのような気持ちが続くわけではありませんでした。子どもの成長と共に私の気持ちや行動も変わってきました。例えば、子どもが6か月も過ぎる頃になると夜も少し長く寝てくれるようになるし、首も据わりはじめ一緒に外出もできるようになります。すると、外出先で出会った人に「何か月?」などと声をかけられ子どもを中心に知らない人とも話ができたり、いきつけの写真屋さんから「大きくなって嬉しいね」等と言われたり、何気ない家族以外の人の一言にあたたかい気持ちにさせてもらうこともありました。

子どもにはママのたっぷりの愛情と笑顔が必要です。

 私は仕事を持っていましたから、4か月の娘を保育ママさんに預けて職場復帰致しました。そこで仕事仲間に恵まれていたにもかかわらず、社会から取り残されるような気分がしていたのは、子どもがいる前と子どもが生まれてからの生活の仕方が大きく変化したからなのだと思います。子どもが生まれて嬉しいし、喜ばしいことなのだけれども、「自由に買い物に出かけたい」「時間も気にせず友達と電話でおしゃべりしたい」等という自分の欲求を満足させる願いと実際の子ども中心の生活とが異なっていたから、孤独感を必要以上に感じていたのだと思うのです。
 実は、日本人女性の寿命も85歳と随分長くなりましたが、そのうちの2~3年間を子どもの為に時間を費やすことはそんなに長くないかもしれないと考えたら急に気分が軽くなったことを思い出します。でも、子どもにとっては生まれてからの3年間は心と身体の成長発達のためにとても重要な時期ですし、ましてやお母さん(またはお母さんに代わる人)なしでは生きていけません。お母さんのたっぷりの愛情と笑顔はこの時期の子どもにとって非常に大切なものなのです。お母さんの安定した関わりが子どもの将来を決めてしまうといっても過言ではないのです。

ママとしての楽しみ方をみつけよう

 そのお母さんの素敵な笑顔を見て子どもたちが育つ事が出来るようにと、保育園でもお母さんのリフレッシュのために「一時的保育」、幼稚園や保育園でも子育て支援のための「育児講座」や地域の市民センターでは「育児サークル」の集まりなどを行っています。このような制度や講座等もご利用になって上手に気分転換を図ったり、お友達をみつけたり、どうか今のうちだけしか味わえない子どもの成長発達をパパや周囲の人を巻き込んで楽しんでください。育児は決して楽ではありませんが、私も楽しみながらがんばります!これからもご一緒に子育て楽しみましょうね。

 

乳幼児期の就寝時間について

平成18年3月1日

近年夜遅くにコンビニや繁華街で子どもやママに抱かれた赤ちゃんを見かけることがあります。 こんな遅くまで子どもを起こしていて大丈夫かしら?と心配になることがあります。2004年の日本小児保健協会の調査で、2歳半の生活習慣を調査した結果が報告されました。夜10時以降も起きている割合が44%でした。1990年のオーストラリアで3歳前後の子ども達を対象にした調査では、夜10時以降も起きている子どもたちはわずか5%のみでした。日本を含めた世界の子どもたちの就寝時間を調査したデータを比較すると、日本の子どもたちの夜更かしは世界でも突出しています。

睡眠について

現代は、子どもたちにとってとても大切な睡眠が軽視されていると思います。昔から早寝・早起き・朝ごはんが大切だと言われていますが、睡眠の研究者からお話を伺うと本当にその通りなのです。科学的に言うとちょっと難しいのですが、夜9時前に寝かせると性的な成熟を抑制したり、老化を防止する作用・抗がん作用があるメラトニンというホルモンが分泌されます。朝早く起きるとセロトニンというホルモンが分泌され、やる気が出て、感情や行動をコントロールする作用があります。もし遅起き遅寝の習慣だとどうなるでしょうか?メラトニン・セロトニンが分泌されず、早く体だけが成熟して心とのバランスがとれなくなる、多動・イライラ感・攻撃性が強く、稚拙な感情表現しかできない子どもになってしまうのです。

生活習慣がやる気や意欲の基礎をつくります。

 やる気や意欲のある子どもに育って欲しいと、ママやパパは願いますよね。そのためには、乳幼児期から生活習慣を整えてあげましょう。早寝・早起き・朝ごはんがその基本です。学力と就寝時間・朝ごはんとの関係を調査した結果では、就寝時間が早く朝ごはんを食べているグループは学力が高く、逆に就寝時間が遅い・朝ごはんを食べないグループは学力が低いということです。この結果からも、いかにきちんとした生活習慣が大切かがうかがえますよね。乳幼児期からこうした生活習慣を大切にきちんとつけていきたいですね。

ちょっと困った子どもの反抗期

平成18年2月1日

 2~3歳頃に出現する反抗は、第一次反抗期と言われ、自立が始まり、能力の目覚しい発達に伴い生じる自己主張が、周囲の人に拒否された結果の反応であるといわれます。自我の発達が順調に行っている証しだと頭では理解していても、私も時々腹立たしく思うこともありました。駄々をこねたり、無理を言ったり、大きな声で泣いたりし、小さい体で精一杯反抗し自己主張を通そうとし、私も何度も困らされた覚えがあります。

ママの態度は、やさしくキッパリと!

ママが、「困ったな!」と思うと、それを感じとるのが子どもですよね。子どもがママを困らせる態度をとったら、どうなさいますか?そんな時、それぞれのお家の考え方で異なるでしょうが、「うちではダメ」ということは子どもの分かる言葉で、やさしい口調で、ゆっくりと説明し、そしてキッパリとした態度で子どもに伝えると良いと思います。例えば、買い物に行った先で子どもが「お菓子を買ってほしい」と駄々をこねたら、叱ったりせずに、「お家に沢山あるでしょう。帰ってから食べようね」などとやさしく伝え、態度はきっぱりと揺るがない、ということなのです。

その子らしさを大切に、将来に向かって

 子どもの方も「こんなことをしたらダメなんだ」とか「こんな言い方をすればいいんだ」と言うことが少しずつわかってき、そういう態度が必ず身についてきます。ママも、あせらず、ゆっくりと自分の子の成長を見つめながら、子どもにとって将来大切なやる気と同様に、我慢強さをも育てていきたいですね。

子育てを楽しみましょう。

平成18年1月5日

あけましておめでとうございます。今年も一緒に子育てを楽しみましょう。

 「子育てを楽しむ」と一言で言っても、「言うほど簡単ではない」ということを私もやってみてよくわかりました。前回のコメントの“ふう”さんがおっしゃるように、本当に日々の積み重ねが大切ですが、それがまた大変ですね。なぜなら、子どもは毎日発達しているし、毎日同じではないからです。が、常に一緒にいるママには、その成長発達が客観的につかみにくく、「子どもの為に」と思ってしている事が子どもとうまくかみ合わないことがあります。すると、ママはただでさえ自分のことを差し置いて一生懸命にしているのに、「この子が応えてくれない」「子育ては大変」ということになってしまいがちです。

ママを困らせる子どもの行動

またもっと大変なのは、子どもはママの気持ちを察しているかのような行動をすることがあることです。ママが忙しくしていると、「だっこ」をせがんだり、子どもが駄々をこねて泣いているのをママが困り果て不安に陥っていると、またそれをそのまま受けて泣き続ける、というような悪循環です。本当にこんな時、精神的に参ってしまいますよね。

ちょっとだけ客観的になってみましょう。

でも、そんな時ちょっとママが気持ちを切り替えて「この子には私の愛情が必要」、「これは期限付きのがまん」と子どもの成長を見守る親の立場を振り返ってみてはいかがでしょうか? そして、何よりも助かるのはパパ(ママ以外の人)の存在です。パパ(それに代わる人)の客観的な意見やフォローがママと子どもの関係に暖かな空気を吹き込んでくれ、それがママの精神安定剤にもなるのです。  
必ず懐かしくふり返ることができる日が来るという先輩ママ達の言葉を信じて、子どもの愛らしさや育児の楽しさを自然に受け入れられるように、一緒にがんばりましょう。

豊かなことばと心を育てましょうパート2

平成17年12月1日

  「ことば」は、意志を伝えたり相手の意見を聞いたりするためのものだけではなく、考える時に使う役割もあります。つまり「ことば」は思考にとって重要な道具でもあるのです。子どもはことばを獲得しながら、その獲得した「ことば」で考えています。

「ことば」の獲得にはやりとりが必要です。

 赤ちゃんが「オムツがぬれた」「おなかがすいた」「抱っこして!」の泣き声にママも「あらオムツがぬれたのね」「おなかすいたの?」「抱っこして欲しいのね」などと動作と言葉で応じますね。その赤ちゃんの要求に応じる行動やことばと赤ちゃんの要求のやりとりがとても大切なのです。
少しづつ「ことば」と「動作」が結びついてくると、食事の支度を始めると「マンマ」と言ったり、「パパは?」と尋ねると「カイシャ」と言ったりするようになってきます。カタコトの「ことば」が出てくるようになった時は、必ず聞いて(間違った発音であっても決して訂正したりせずに)、意志を汲み取って、ママやパパの気持ちや意見もゆっくりお話してあげ、そのやりとりを楽しんでみて下さい。子どもが子どもなりに考えているのがよーくわかりますよ。

子守唄や絵本も一緒に楽しんでくださいね。

 ママやパパのあたたかい膝の上で絵本を読んでもらったり、子守唄や季節の童謡を歌ってもらうなかで、子どもは沢山の豊かな美しい「ことば」に出会いますね。パパもママも「絵本や童謡の世界」を子どもと一緒に旅する時間を大いに楽しんでくださいね。

豊かなことばと心を育てましょう

平成17年11月1日

 子どもの発達にはやりとりがとっても大切

 生まれたばかりの赤ちゃんは、ただニヤ―っと微笑むだけですが(生理的微笑といわれるのですが)、3~4か月になるとママや見慣れた人に対してニコ―っと微笑んだり「ウーウー」と声を出して親愛の情を表したりします。さらに5か月頃には授乳後の機嫌がいい時などに声をかけると「ウックン ウックン」と返事をしてくれるようになり、子どもの可愛い表情や反応を見ているだけでなんだかあたたかい豊かな気持ちになる時間が増えてきますよね。このような子どもの行動を見て、ママ(またはママに代わる人)の「かわいい」「うれしい」という気持ちや「元気に育ってね」等の願いを愛情たっぷりの「ことば」や「抱っこ」で赤ちゃんに伝える、そのやりとりのくり返しが子どものことばと心の発達を育むのです。
 
 赤ちゃんのテレビやビデオの影響をご存知ですか?

 「2歳まではテレビを消してみませんか?」というのは、NPO法人子どもとメディアのキャッチフレーズです。少なくとも3歳のお誕生日を迎えるまでは、できる限りテレビやビデオを消しましょう!というメッセージです。
授乳中は、ただ栄養を摂るだけでなく『ママが赤ちゃんを見つめる⇔赤ちゃんがママの笑顔を見る』と目を見つめ合いながらやりとりをするとても大切な時間です。もしママがテレビを見ていたらどうでしょう?赤ちゃんは視線をどこへやったらよいか迷うでしょう。また、心の通ったコミュニケーションを図ることを学んでいるはずの静かで穏やかな時間が、テレビやビデオの大きな音・強い光の刺激で奪われてしまいますよね。ママそしてパパもスイッチを切る習慣を身につけたいですね。

子育ては、初めから完ぺきでなくてもOK

平成17年10月1日

ストレスをためないで
 今年3歳になった娘を出産した直後、ベットの上で「ご対面」と両腕に抱いた時の感動と充実感は、今も鮮やかに思い出されます。ところが、いざ子育てを始めてみると、その幸福感よりも子育てブルーに悩み、母親失格と自分を責める日が続きました。でも、よいママしようと無理をせず、肩の力を抜き、ストレスがたまりそうな時は、それを吹きとばすのに子育て仲間に話して苦労を認め合ったり、少しの時間、外に出たり、気分転換を心がけました。子育ては、ママの「心の元気」がいちばんですよ。

間もなく終る不安な時
 生まれてすぐの赤ちゃんは「泣くこと」が仕事です。泣き声の中で、オムツ替え、授乳など、赤ちゃんの世話に明け暮れていると、この生活が永遠に続くのではないかと不安になりますが、この期間は間もなく終り、「あの時は何故あんなに悩んだのだろう」と思うものですよ。人生80年時代の僅かな限定期間とゆったり構えたいですね。

泣き声は自己主張
 赤ちゃんが泣くと、ママはすぐそばに行ってあやしたり、抱っこしたり、オムツを取り替えたり、おっぱいを与えてくれる。そのくり返しの中で要求を満たしてくれるママに対して、絶対の信頼感が育ちます。「抱っこして!」の甘え泣きにも応えてあげることで心が安定し、愛されているという自信を得ることは、この時期とても重要なのです。
最近抱かれるのを嫌がる赤ちゃんが増えたことを保育現場で案じていますが、肌のふれあいを大切にしたいですね。