シャルマ直美 先生

4.「今、まさに・・・その4」

令和2年7月27日

 いよいよ私の担当分は、最終回となりました。第1回の頃は、新型コロナウイルスの感染状況が厳
しくなり、その後緊急事態宣言も出されました。そして第4回目となった今、一定の予防行動を取り
ながらも、社会活動は確実に戻りつつあると感じます。

 これまでの生活では、個人的にピンチをしのぐことが多かったと思いますが、今回は社会全体でピ
ンチをしのぐ経験をしました。今なお、大変な状況は続いています。

 お子様は変わりゆく状況に合わせて柔軟に対応できたでしょうか?行動に制限がかかっても、適度
に自分のペースで生活できたなら、お子様の適応力を信頼していただいて良いのではないかと思いま
す。

 一方で、すっかりペースが崩れてしまったお子様もいると聞きます。特に私が見聞きするのは、生活
リズムの乱れから、学校再開に合わせた適応が難しくなっているということです。「どんな生活をす
るか」は、ピンチをしのぐ上で、とても重要だということが分かります。また、「今できることを探
したり工夫したりする力」「置かれた状況は変わらなくても、自分の考え方を柔軟にしてしのぐ力」
も、これまでお伝えしてきました。

 こころのピンチは、突然私たちに訪れます。しかし、今後は今回の経験を思い出していただきたい
のです。ピンチをしのいだ経験は、そのピンチがどのようなものであっても、必ずお子様の底力とな
るでしょう。どのような経験も決して無駄になることはないのですから。

 また、生き方に「正解」はないし、取り巻く状況も変化します。以前に通用したことが通用しなく
なることさえあります。そんな中で生き抜こうとしているお子様の傍らで、どんな時もあたたかく励
まし、「ありのままの自分を投げ出して受け止めてもらいたくなる」ような、懐深い大人であってく
ださい。私もそうありたいと心から思います。

 ・・・4回のシリーズにお付き合いいただき、ありがとうございました。

3.「今、まさに・・・その3」

令和2年6月17日

 6月になり、学校が再開しました。「待ちに待った再開」と感じる子ども、「このまま家にいたいのになぁ」と思う子ども、「またあの学校が始まるのか・・・」と気分が沈んでしまう子どもなど、さまざまだと思います。中には登校できなくなっている子どももいることでしょう。この時期、新型コロナウイルスの影響は大なり小なり、どの人にも陰を落としています。ここでまた「ピンチをしのぐ力」について考えたいと思います。

 世の中全体が、大きな不安から少しずつ抜け出そうとしている今、いろいろな感染症予防対策の制限があるものの、何か月も止まっていた日常生活の時間が動き出すのを感じます。お子さまはこの状況に、どのように対処しようとしているでしょうか?

 まずは身体(生活のしかた)の様子はどうでしょう?昼間にしっかり活動できる生活リズム(自律神経のはたらきが整っている状態)が取り戻せているでしょうか?食欲はありますか?特に中1、高1の子どもたちは、学校生活に慣れるために、これからしばらく時間が必要でしょう。当然ヘトヘトに疲れて帰ってくると思います。大人も子どもも「ステイ・ホーム」の時間から、ゆっくりと元の生活に戻っていくようにすること、そしてそれでいいんだと思えるようにしてあげましょう。他の人がテキパキとこなせているように見えたとしても、取り残されているような感じがしたとしても、自分のペースを大切にしましょう。それが自分を大切にする、ということです。

 大人も子どももピンチをしのいでいる状況は続いています。自分の心と体の状態に気付き「疲れているから休もう」「ストレス発散した方がいいな」など、生活のしかたを取り戻せるよう、焦らずお子さまを見守っていただきますようお願いします。まずは身体(生活のしかた)から、少しずつ以前の日常に近づけていくことをお勧めします。そして、身体(生活のしかた)から、心を健康にしていきましょう。

 

2.「今、まさに・・・その2」

令和2年5月20日

 福岡県では、緊急事態宣言が解除されましたが、自粛生活が続いています。「ああ、まだ続くのか・・・」とがっかりなさっている方も多いことでしょう。しかし、同時に、前回お伝えした、それぞれの「ピンチをしのぐ力」が試されているこの時、「今、この状況でできること」を工夫して生活しておられる方も、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

 例えば、家でできる新しい趣味を開拓したり、離れて住む方とのビデオ通話やオンラインの活用が進んだり、思春期の子どもたちもこの状況で使える通信ツールを駆使して交流したり勉強したり・・・といった生活のしかたの変化や工夫の様子が報道されています。

 これはまさに「ピンチをしのぐ力」だと言えます。「ピンチをしのぐ力」とは「自分の置かれた環境や状況に合わせて、考え方や生活のしかたを柔軟に変えることによって、ピンチをしのいでいく力」のことを意味するからです。

 こんなにも社会全体で心を合わせ、力を合わせて「自分も大事にしつつ、周囲の人たちのことも大事にする」という行動を続けている私たちは、きっと社会人としても成長しているに違いありません。一方で、残念ながら、新型コロナウイルスに関連して、差別や偏見にさらされている方たちがいると聞きます。感染することへの恐怖や不安が冷静さをなくさせ、社会を分断する言動につながってしまっています。せっかく社会人として成長しつつあるのに、このような姿は、絶対に子どもたちに見せたくないものです。

 もうしばらく、もう一息、これまで頑張ってきたことを続けていく姿を、大人たちのピンチをしのぐ力を、子どもたちに見せていきましょう!ピンチをしのぐ大人の底力は、大人への批判力もついてきた思春期の子どもたちだからこそ、大人への尊敬・信頼の気持ちにつながり、何より大きな安心感となることでしょう。

 

 

1.「今、まさに・・・」

令和2年4月20日

 みなさま、初めまして!私は北九州市でスクールカウンセラーとして小・中・高・特別支援学校を訪問しています。この度、その経験から「子どもの心のピンチに向き合うために」というテーマをいただきました。

 今まさに「新型コロナウィルス」感染拡大により、日本中、世界中がピンチを迎えています。このように私たちは、思いがけず望まないピンチに遭遇することがあります。見通しのもてない先行きに不安になったり、他の人はどうしているのかと必要以上に他者の言動が気になったりします。そのような気持ちになってしまうのは、この特別な状況においてむしろ当然のことです。さらに現代は、SNSという非常に便利であると同時に、他者の言動や動向に触れやすくなる通信手段があり、時に混乱のきっかけとなる場合もあります。
 思春期の子どもたちは今、学校にも行けず、部活動もできず、外出も自粛要請される中、自分の湧き出すエネルギーにどうやって対処しているのでしょう?大変な経験をしていることと思います。

 しかし、こんな時こそ私たちは力を合わせて、子どもも大人もピンチをしのごうではありませんか!ピンチが過ぎ去るまで、しのげばよいのです。必ず過ぎ去るのですから。外出自粛は要請されても、一歩も外出が許されないわけではありません。「どんな外出ならできるだろうか?」「こんな時だからこそできることは?」というように「自分と周囲の大切な人の命や健康を守りつつ、今できることを探す力」は、まさにピンチをしのぐ力です。子どもを取り巻く私たち大人が「今できること」を工夫し、落ち着いて生活していることによって、子どもたちも「今はピンチだけど、この先きっと改善していくだろう」と希望を持つことができるでしょう。子どもの心のピンチに向き合うために、私たち大人一人一人の「ピンチに向き合う力」が試されているなあ・・・と思う今日この頃です。