第3回 思春期うつについて 実践的な関わり

平成29年6月14日

 第3回は、思春期うつを予防するために、親や先生、地域の人たちがどのように実践できるかについて書きます。

 子どもたちが「自分はダメだ」「自分には生きる価値がない」と落ち込んだり、死にたくなったりするのを防止するためには、子どもたちに日頃から「心の栄養=ストローク」を充分与えましょう。
 「ストローク」とは、相手の存在や価値を認める働きかけ、刺激のことです。人は、体の栄養だけでなく、抱っこする、微笑みかける、関心を持つなどの心の栄養が必要です。ストロークには、言葉による言語的なものと言葉によらない非言語的なものがあります。以下、ストロークの種類を4種類に分けます。

 ○ 無条件のプラスのストローク
  ・存在の肯定(存在や価値を認める)
  ただ、生まれてきてくれたことが大好き

 ○ 条件付きのプラスのストローク
  ・行為の肯定・・・しつけに使う
  何かできた時にほめる

 ○ 条件付きのマイナスのストローク
  ・行為の否定(間違った行為)・・・しつけに使う

 × 無条件のマイナスのストローク
  ・存在の否定・・・要らないストローク
  にらむ、しかめっ面をする 「お前はダメだ」「嫌い」「生きる価値がない」

 上記の4種類のほかに、ストロークが全くないことをノンストロークといいます。人はストロークがないと自分の生きる価値、価値を認めることができないために、ストロークを求めます。人は、プラスのストロークをもらえないと、マイナスのストロークでももらおうとします。例えば、赤ちゃんが生まれて、赤ちゃんのお世話で追われるお母さんに、わざと怒られるようなことをしてストロークを得ようとする上の子どもがそれにあたります。

 「基本的自尊感情」は、無条件のプラスのストロークによって、「社会的自尊感情」は条件付きのプラスのストロークと条件付きのマイナスのストロークがバランスよく与えられたときに高まります。

 私のライフワーク、学校での「いのちの授業」で、「たとえ親の期待に応えなくても、あなたは無条件に愛される価値がある」と子どもたちに話すと、泣き出す子どもがいます。子どもは、親から無条件に愛して欲しいんだと思います。一方、社会的な関わりにおいては、「基本的自尊感情」と「社会的自尊感情」が、バランスよく高められることが重要です。これも大切なストロークです。つまり、無条件のプラスのストロークを基本に、子どもたちを条件付きで褒めたり、叱ったりというストロークも必要です。何かをやろうとした時に褒める、出来た時に認める、してはいけない時には適切に叱ることなどです。皆さんも、身近な気になる子どもさんに「こんにちは、元気?」「がんばってるね」などと、一言声をかけることから実践しましょう。

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