平成29年5月11日
第2回はカウンセリングの視点から、思春期うつ病と「自尊感情」との関連についてです。お母さん方から、以下のようなご相談がありました。
「子どもが学校に行かなくなって、朝起こしても起きず、勉強もせずにゲームばかりして、このままだったらニートになりそうで不安です。お父さんから怒鳴られて子どもは落ち込んで、あれから口も聞きません。私はどうしていいか分かりません。」
一方、子どもさんと個別に話してみると、
「学校に行けない自分は生きる価値が無い。親の期待に応えられない。ゲームもしたくてしてるわけじゃない、することがないから…。もう、本当は死にたい。」と打ち明けてくれました。
このように、これまで、何かの条件(勉強ができる、スポーツができるなど親の期待に応えるなど)を満たすことで自分の自尊感情を保ってきた子どもが、その条件を満たせなくなった時に「うつ状態」になってしまうことが多いのです。
自尊感情には「基本的自尊感情」と「社会的自尊感情」があり、カウンセリングでは基本的自尊感情を高めることに焦点を当てます。「基本的自尊感情」とは、誰かと比べてではなく無条件で愛され、受け入れられているという無条件の感情のことで、「社会的自尊感情」とは、人と比較して優れているか劣っているかという比較から生まれる感情のことです。大切なのは、カウンセリングで子どもが自由に感情を表現できるようになることで、それにより子どもは、ありのままの自分でいいんだという自信をつけていきます。そして、次第に、「基本的自尊感情」が強まり「親の期待に応えなくても、自分は無条件で価値がある存在であること」を心から理解できるようになり、自分の生きる価値を否定する気持ちがなくなっていき、次第に思春期うつから回復するわけです。