高口 恵美 先生

2.非認知能力を育むために出来ること➀―基盤となる愛着形成について―

令和7年1月17日

 自分らしく主体的に生きていく力とも言える「非認知能力」を高めることを意識したときに、愛着形成の重要性は避けて通れません。

 愛着形成とは人が特定の他者と感情的な絆を結ぶプロセスと言われており、乳幼児期における養育者等との間で形成されます。イギリスの心理学者ジョン・ボウルビィ(John Bowlby)の提唱する愛着理論では、幼少期に安定した愛着が形成されると、自己肯定感に良い影響を与えたり、健やかな人間関係の形成に繋がったりします。そして、それが良好なセルフマネジメントに繋がると説明しています。

 前回のコラムの中で、非認知能力の視点として「自己統制(セルフマネジメント)」や「他者と協働することができること(コミュニケーション)」は中心的な能力であると記しました。それらを基盤として他者の想いに耳を傾けたり、自分の思いや考えを探求したり、発信(カンバセーション)したりしながら、今目の前にないものを創造し状況の変化にも臨機応変に対応する力を身に付けていくと考えられています。これらのことから、やはりこの愛着を形成することは、非認知能力を高める上でとても大切なプロセスであると考えます。

 では、その愛着形成を支えるには、子ども達とどう向き合っていけばいいのでしょうか。そのポイントとして、幼少期の子どもの要求(泣く、声をあげるなどで発信)に対応し安心感を与えることが挙げられます。例えば、抱っこやスキンシップなどの身体的な接触、ポジティブな対話や子どもの言葉の受容、子どもの気持ちへの共感的な反応などが有益だと言われています。

「幼少期ということは、愛着形成は児童期では手遅れなの???」

と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。

上記に挙げたような関わりや、今出来ていること、がんばれていることを「よくできたね」や「○○さんが、がんばっていることが嬉しい」などと言葉にして伝えながら対話する時間を大切にしてみてください。また、学童期は仲間(友達)との安定した安心な関係性の中でも愛着は形成されると言われています。

1.非認知能力ってなあに

令和6年12月20日

 わたしはスクールソーシャルワーカーとして小中学生に伴走をする福祉の専門職です。

 いろんな課題や生きづらさを抱えた子ども達と出会う中で、子ども達が自分自身を知り、自分をマネジメントし、自分や他者を大切にしながら柔軟に生きていく力ともいえる「非認知能力」を身に付けることの重要性を感じています。

 非認知能力とは、成績やIQのように数値で測れる力とは異なり、物事に関心をもつ力、やる気を出し集中する力、自分のことを理解する力、自分の思いを伝える力、他者と協力する力、物事に見通しを立てて計画的に取り組む力など、よりよく生きるための一連の力を指します。

 この力が身についている子どもは、困った場面に直面した際にも、そこをクリアするためのアイデアを思いつく、誰かに相談する、心理的ダメージが大きい場合はそれと距離を置くなど、柔軟な判断と対応をしていく様子がうかがえます。

➧自分の心の動きに耳を傾ける。そして自分と上手につきあう、自分の気持ちを誰かに伝える。

➧周りの人の声に耳を傾ける。相手を尊重する、協力する、一緒に何かを生み出す。

➧いろんなことに興味関心を持ち、参加する、探求することができる。


 不確実で不安定な時代と言われる未来を生きる子ども達。あらゆる環境の変化の中でも、自分らしくイキイキと自分の人生を送って欲しい。そのためにわたしたちに出来ることについて、このコラムを通してみなさんと一緒に考えていけたらと思います。