三原 詔子 先生

3.こんな時どうする? イヤイヤ場面での対応

令和6年10月21日

 第2回では、「イヤイヤ」の基本的な対応について具体例を交えてお伝えしました。今回は、「イヤイヤ」の場面ごとの対応についてみていきます。

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[イヤイヤ発生の予防策]
 お出かけの支度の声掛けのタイミングは、遊びが途切れた時です。「早くしなさい」「急ぎなさい」はNGワードです。指示ではなく、一緒に準備を進めましょう。ママやパパも、お出かけ前は、時間に余裕を持つことが大切です。
 上手くいかないときは、ママやパパの状況を伝え、協力を要請します。「早くしないとお仕事に間に合わないかから、ご飯を食べて助けてくれる?」などと伝えて、協力者になってもらうことで、上手くいくことがあります。

[着替えのイヤイヤ対応]
 朝の着替えを嫌がるときは、「こっちとこっち、どっちのシャツを着る?」など、子どもが前向きになるように選択権を持たせます。また、「お着替えを手伝ってもいいかな」と主導権を渡すことで、上手くいく場合があります。それでも嫌がるときは、「嫌だね」「着替えたくないね」「自分でやりたいね」など、子どもの気持ちを受け止めながらもテキパキと着替えさせることをお勧めします。

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[外出先でイヤイヤする理由]
 大人との外出は、子どもからすれば大人につき合わされている行動です。外出の目的が子どもを喜ばせるためであっても同じです。なぜなら、外出先では子どもの行動が制限される場面が増えるからです。その為、イヤイヤと、ぐずる場面が多くなります。また、疲れなどで自分の感情をコントロールできなくなって、怒りを炎上させる場合も出てきます。

[外出先でのイライラ予防策]
●お菓子、動画視聴などで子どもの興味を満たし、落ち着いてもらう対応はありです。
●外出先で楽しめる遊びグッズを準備しておく方法もあります。例えば、チラシにシールをペタペタ貼って遊べるように準備しておきます。子どもが熱中できる遊びの1例です。
●お出かけの見通しを立てられるように、スタンプラリーなど、行先を書いた紙を見ながらママやパパが子どもとやりとりする方法もあります。字が読めなくても、シールを貼るなどしてゲーム感覚で楽しめます。


[怒りの炎上対応]
 外出先で子どもが苛立ち、泣き叫び、地面に転がって大騒ぎすると、人目もあるので、ママやパパは何とか泣き止ませようとして、次々に声をかけたくなります。この対応は、ママやパパのイライラや焦りが子どもに伝わって逆効果、余計に怒らせてしまいます。
 子どもに言葉をかける時は、まず子どものネガティブな気持ちを代弁します。例えば、「疲れたね」「帰りたいね」「欲しいね」「買いたいね」など伝え、苛立ちが収まってくるまで見守ります。 
 自分の気持ちをママやパパに受け止めてもらうと、要求が受け入れられなくても、気持ちはある程度気持ちは満たされます。その結果、怒りの炎上時間の短縮が期待できます。

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 好奇心が旺盛な時期は、周囲の状況が気になるものです。子どもが集中して食べないと食事には時間かかります。では、どうすれば集中して食べるのでしょうか。
<チェックポイント>
 □毎日の3食の時間はほぼ同じですか。
 □子どもの遊びが途切れたタイミングで食事の声掛けをしていますか。
 □テーブルの雰囲気が楽しめるように一緒に食事をとっていますか。

<対応策>
●「早寝早起き朝ごはん」、生活のリズムを整えると、食事の時間にお腹が空いて食べるようになるケースもあります。
●食事の量を減らして「完食」する喜びや達成感を味わってもらうのは試しやすいチャレンジです。小さいお茶碗やお椀を使い、おかわりを楽しめるようにしておく方法もあります。また、『完食』したことに喜びを感じることで、「食べようかな」とやる気につながります。
●食事時間に興味が持てるように、テーブルを拭いたり、野菜を洗ったりちぎったり、食事のお手伝いなど、役割を任せることも一つの方法です。
​●残した食べ物をお弁当箱に入れておき、子どもが食べたくなったときに何時でも食べられる環境を作っておくことも、便利で有効です。

[好き嫌いへの対応]
 好き嫌いをせず食べてほしいのが親心ですが、「キライ!」「イヤ」など、食べない時があります。食事では楽しい雰囲気を作ることが一番大切です。『食べさせなければ!』のプレッシャーを自分にかけないでください。好き嫌いについて一切話題にせず、大人が美味しそうに食事をすると、子どもは成長とともに自然に食べるようになっていきます。 
 乳幼児期は、一時的に偏食気味になることもありますが、好き嫌いをなくすには放っておいて、食べられるようになった時に「美味しいね」とサラリと共感することがポイントです。

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 子どもは思い通りにいかない時、物を投げたり、叩いたりします。例えば、上手く積み木を積めないもどかしい気持ちを、積み木を投げる行動で表現する場合があります。こんな時は、「ダメダメ」「〇〇君ダメ!」ではなく、子どものそばに行き「投げません!」と止め、子どもにして欲しい行動を簡潔に伝えます。毅然とした態度と表情が大切です。それと同時に、「イライラするね」「高く積みたいね」など、子どもの気持ちを言葉にして感情が鎮まるまで見守ります。長時間叱ったり、怒ったりしても、ママやパパが怒っていることだけが伝わり、なぜ叱られたのかは伝わりません。

*子どもの「イヤイヤ」には、どの家庭でも試行錯誤で対応されているかと思います。お子さんに合った方法が見つかることを願っています!Fight!!

 最終回は、「イヤイヤ期の環境づくりとふれあい遊び」についてご紹介していきます。

第4回目に続く

2.「イヤイヤ」の基本的な対応

令和6年9月20日

 第1回では、「イヤイヤ期ってどんな時期?」をテーマに、イヤイヤ期の子どもがどんな成長過程をたどっているのかについてお伝えしました。今回は、子どもの自己主張をどこまで受け入れたらよいのか、どのようにコミュニケーションを取ったらよいのかなど、「イヤイヤ」の対応に困った時に試していただきたい「基本的な対応」について具体例を交えて紹介していきます。

《基本的な対応》
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[方法]子どもの気持ちを推測し、「言語化」して伝えます。
 子どもは自分の気持ちを受け止めてもらうことで感情を鎮め、気持ちを立て直すことができます。要求が結果的には受け入れなかったとしても、受け止められると気持ちがある程度満たされます。受け止める方法は、子どもの気持ちを言語化して伝える対応です。子どもが「そうなの、わかってくれてありがとう」という気持ちになる言葉をさがし、伝えます。簡潔に、言葉を変えながら、繰り返し伝えます。

《言語化の例》「イヤだね」「まだ遊びたいね」「欲しいね」「痛いね」「悲しいね」「悔しいね」 

[効果]子どもの気持ちを言語化して伝えることは、子どもが自分の気持ちを言葉で表現できるようになっていく助けにもなります。

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[方法]
言葉をかけたら、子どもが気持ちを立て直すまでしばらく見守ります。子どもの表情をよくみて、気持ちが落ち着いたと感じたら「聞く耳」を持つ余裕が出たというサイン!

(ケース1)henka1.gif ⇒ 抱っこしてギュー!

《「聞く耳サイン」の例》うなずく、泣き声が小さくなる、ママの顔をみる(感情が落ち着く) 

(ケース2)henka2.gif ⇒ 言葉を変えてみるor黙って見守る
 
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[方法] 「聞く耳を持つサイン」が出たら、説明やメッセージを簡潔に伝えます。長々と子どもを諭しても効果は期待できません。なぜなら、子どもが集中できる時間は短く、興味が他に移るからです。

《伝える内容》 他者(ママやパパ、お友達)の気持ち、状況説明、社会ルールなど

[効果] 子どもは気持ちが落ち着いたら、ママやパパの話を聞く余裕が出てきます。
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この対応により、子どもは他者の気持ちや状況を理解できるようになり、自分の行動のすべてが受け入れられる訳ではないということに気づいていきます。

●乳幼児期に「注意」を伝えるときの留意点●
 乳幼児期の子どもは経験を通して善悪の判断ができるようになっていきます。しかし、身の危険がある時は、即座に「注意」を伝える必要があります。「注意」するときは、子どもの側に行き、向かい合って、「降ります」「さわらない」「叩かない」など、毅然とした態度で正しい行動を簡潔な言葉で伝えましょう。「ダメ!」「〇〇くん!」などと感情的に叱っても伝わりません。怒るのではなく「注意」をします。

次回は、「こんな時どうする?Q&A」と題し、「イヤイヤ」の場面での対応事例についてご紹介します。

第3回に続く

1.イヤイヤ期ってどんな時期?

令和6年8月23日

 自分でできないからと手を貸すと「ジブンデ!」と泣いて怒り出す、自分でできるのに「ママやって!」と言ってくる、自分でできるでしょうと言うと泣きわめく、今日もイライラ・感情的に叱ってしまった~。子どもが成長して2歳前後の時期に、どの親も直面する経験です。一般的に「イヤイヤ期」と呼ばれていますが、この時期の子どもの中では、何が起こっているのでしょうか。今回から4回シリーズで「イヤイヤ期」の子ども理解と向き合い方についてお話していきます。
 「イヤイヤ期ってなんだろう?」「どう向き合えばいいの?」「いつまで続くの?」「どう対応したらいいの?」、そんな疑問だらけのママやパパへ、初回は、この時期の子どもがどんな成長過程をたどっているのかをお伝えします。

《イヤイヤ期と子どもの成長》
●「イヤイヤ」の発動
 子どもが成長して2歳頃になると、運動機能が発達し、自分でできることが増え、自分の意思で行動したいという気持ちが強くなります。自立への第1歩としては喜ばしいことですが、この時期は、まだ自分の感情を上手くコントロールすることができません。そのため、思い通りにならない時やできない時、「イヤイヤ」が発動します。周りの大人が何とか落ち着かせようとして、あれこれと声をかけても、叫び声を上げたり、泣いたり、物を投げたり、癇癪を起こしてしまい、逆効果になる場合もあります。なぜなら自分でもどうしたいのかわからずモヤモヤして、気持ちに余裕のない状態のため、何を言われても受け入れられないからです。
 言葉が発達し「なぜ嫌なのか」「自分はどうしたいのか」など、子どもが言葉を使って感情を伝えられるようになると、徐々にイヤイヤは落ち着いてきます。年齢に個人差はありますが、3歳頃が目安の時期と考えられます。

●「イヤイヤ期」の成長
 イヤイヤ期は、感情コントロールの練習時期です。身近な大人にネガティブな感情を積極的に受け止めてもらいながら子どもは自分の感情を鎮め、気持ちを立て直す経験を重ねていきます。そして、感情をコントロールする力を身に付けていく過程で、大人や自分に対する信頼感を育み、自分の行動のすべてが受け入れられるわけでないということにも徐々に気づいていきます。「イヤイヤ」は、無意味に拒否や主張をしている訳ではありません。「イヤイヤ」言いながら(甘えながら)、健全な心身を育んでいるのです。

●周囲の大人の対応
 そうはいっても、子どものエネルギッシュな「イヤイヤ」に対応する大人は大変です。「イヤイヤ」が発動したときは、焦らず子どもの気持ちに寄り添い、気持ちが鎮まるまで温かく見守ることが大切です。ただ、子どもの自己主張をどこまで受け入れていいのか、どのようにコミュニケーションを取ったらよいのかなど、現実問題として対応に迷うポイントは多々あります。
 次回は、子どもの「イヤイヤ」への対応に困った時に試していただきたい、「基本的な対応」の具体例についてご紹介していきます。

 第2回に続く