~生きる力 心身ともに逞しい子どもを目指して~第2回 幼児運動能力テスト編

平成21年12月8日

 文部科学省が1964年から全国的に実施している6歳以上を対象とした「体力・運動能力調査」は、1985年頃をピークに現在まで低下傾向にある子ども達の体力・運動能力の向上を計るため、二年前から全国全ての小学5年生と中学2年生で実施されています。(2013年以降は、小・中学生の全学年で実施を決定。)その結果、小学生の福岡県平均は全国平均を男女共に二年連続で下回っており、都道府県順位では、男子38位・女子41位(2009年1月発表 統計結果より)となっています。

幼児運動能力テスト
 本園では、小・中学校の全国実施に先駆け三年前から「幼児運動能力テスト」を実施(文部科学省推進“元気アップ親子セミナー”事業の一環で、県内の幼稚園では初めて実施。テスト項目は、25m走・テニスボール投げ・体支持連続時間・立ち幅跳び・両脚連続跳び越しです。今年度から県立スポーツ科学情報センター考案のテストを実施。写真参照)していますが、そのことで園児一人ひとりの成長を明確に把握し、園内・外の同年代の子ども達との比較が出来るようになりました。本園の平均値を全国平均と比較することで課題が浮き彫りとなり、その後の指導に大変役立っています。又、テストを実施することで、保護者の子どもの体力・運動能力への関心が増し、その重要性も理解して頂いてるようです。

 本園が初めて実施した三年前の結果では、テスト項目のほとんどが全国平均を上回っており、特に、年長児は男女共に「走力」「跳躍力」では、小学3年生レベルでした。しかし、体支持持続(腕力で体重を支える能力テスト)のみ、各学年共に全国平均を下回っていました。この結果を受けて動物の模擬運動(クマ歩き→両手を着いて歩く)など、腕で体重を支える動きやあそびを以前に増して活動に取り入れ、一年間で改善することが出来ました。

 子どもの「体力・運動能力」の差は、その子が生まれてから現在までの経験値の差であり、「どんなこと」を「どれだけ」やったかで決まります。衣服着脱(立ったままズボンや靴を履けない子が多い)や、自分の荷物を持つ、お手伝いをするなど、生活の中にも「体力・運動能力」を向上させる要素が含まれています。過保護な世話やバリアフリー化した生活は、子どもの成長の妨げとなります。三間の喪失(遊び時間・遊び空間・遊び仲間)に代表される子どもを取巻く様々な環境変化によって、子ども達の「体力・運動能力」も変化してきました。我々大人が意図的に関わらないと子ども達の体力向上を図れない時代になっているのは寂しい限りですが、「心身ともに逞しい子ども」に育ってほしいという親の願いは、昔も今も同じだと思います。「エレベーターより階段を!」と、大人のちょっとした心掛けが子ども達の成長を促進します。まずは出来ることから始めてみて下さい。

    愛宕幼稚園  松延 純一

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