思春期における「現代を生きる子どもたちへ〜自己肯定感を育むための理解と関わり方〜」③

令和3年6月22日

 夏日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
 さて、今回は「大人の言うことを聞けない思春期のお子さんへの理解と関わり方」についてお話しします。
 客観的に物事が見えるようになる思春期の子どもたちにとって、大人の意見を鵜呑みにしないことは、自分の意見を持っている健やかな成長とも言えます。例えば、「母は〇〇がいいと言うけれど、私は□□がいいと思う」など、普段の買い物から進路相談まで様々な場面で<親子でも意見は違う>ことを経験されておられるのではないでしょうか。

①大人と意見が異なるお子さんとの関わり方
 親と異なる意見も、同じ意見も自分の言葉で言えるお子さんは、「考える力、伝える力」がついています。
 そのままお子さんの意見を尊重してあげられる場合はいいのですが、「苦手な教科だから勉強しない」「学校がつまらないからやめる」など極端な意見や「友達とのつき合いがあるから夜遅くても、即SNSの返信をしないと」など、友達の意見に振り回され、自分のことが常に後回しになることや場当たり的になっていることもあります。
 これらは大人から見ると安直な判断、失敗を招くような判断でありますが、あれこれ口を出すのも…と悩まれることもあるのではないでしょうか。
 <失敗から学ぶ>こともありますので、お子さんの判断にとことん付き合う方法もありますが、もう一つの方法として「メリット・デメリット分析」があります。お子さんが選んだ意見が、今のお子さんにとってどのようなメリット、デメリットがあるのかを書き出して観察してみる方法です。書き出していくと、大きなデメリットが見つかることがあります。例えば、友達と仲良くしたい気持ちの根底に「仲良くしないと陰口を言われるのではないか」と感じていたなど、お子さんの不安が隠れていたりします。 
 この時のお子さんへの関わり方の大切なポイントは、お子さんがデメリットの大きさに気づいた時も「子どもの主体性を尊重すること」です。「ほら!お母さんが言った通りじゃない!」と、言いたくなる気持ちはよく分かります。しかし、前回、お話ししたように子どもはいずれ自分の生き方や時間の使い方を選び取っていかなければいけません。自分で選び取る力をつけるために「よく気づいたね」「そんな考え方もあるね」と、お子さんが気づけたことや考えたことを伝え、自らデメリットを見直すきっかけを与えましょう。

②“どうせ自分は無理”と感じているお子さんへの関わり方
 これまでの様々な経験から、自信をなくしているお子さんや無気力状態のお子さんに見られる傾向です。今まで自信があったお子さんでも、大きな挫折経験は自信をなくすものです。
 自信を取り戻すために、安全基地となる身近な大人がその子を信じてあげることが必要です。子育てのいいところは、やり直せるところです。お子さんが自信をなくしたり、無気力になったりしていることを「私の子育てのせい」と考え過ぎず、どうしたらお子さんが自信を取り戻せるのかを考えていきましょう。
 方法としては、どんな小さな内容でも、今、お子さんができている行動や続けている行動を褒めるところから始めましょう。行動には「試験で100点を取った」など目に見える<結果行動>と、「試験前に勉強していた」「明日の試験に備えて徹夜せずに寝た」「友達からの無理な依頼を断ろうと考えた」など、結果に辿り着くまでの“考え”を含む<プロセス行動>があります。特に自信が持てないお子さんには、この<プロセス行動>を認めたり、お子さんが当たり前のように行っている生活に必要な行動(食事を摂る・服を着替える・睡眠を取る)ができたら褒めたりしてあげましょう。
 また、自信をつけることを目的としたタイムマネジメントも行ってみましょう。9割程度できる計画を立てることから始めて、「自分で立てた計画が実行できた」経験を重ねていくことで、少しずつ自信を取り戻していくでしょう。
 思春期のお子さんは、相手の反応に敏感になっている時期でもあります。褒める時は大袈裟になり過ぎず、“さりげなく”褒めて、お子さんが自分の行動を観察しやすい環境を整えましょう。

 

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