平成20年5月15日
「家には会話がなかった」「ずっと居場所がなかった」「いい子でいたかった」「ずっと一人で頑張ってきた」「愛されるために努力してきた」「愛されている実感がない」搾り出すように、でも淡々と自分のことを話す子ども達の声は大人の耳にどう響いていたのでしょう。
パニック障害・摂食障害(拒食症と過食症)・自傷行為などの心の病気で思春期内科にかかる子ども達が「親子カンファレンス」において、主治医森崇先生(北九州津屋崎病院副院長・青春期内科)に「何か言いたいことは?」「親に言いたいこと・望むことは?」と促されて発せられた言葉の数々です。このカンファレンスに参加していつも思うことは、ここまで子ども達は自分のこと・家族のことを自分の言葉で言えるのかと驚くことと、親子での認識のずれが大きくそれが子ども達をここまでにさせたのかなあ、ということです。
「ここに通い、自分のことを見つめ・家族のことを思い返し・病気を認識しこれからの自分を見つけていく作業をしていくことがこの子たちにはどれだけ大変で苦しい作業であったかは想像もつきませんが、この言葉に大人たちは耳を傾けてほしい。」
こんな子ども達を見つめてきた森先生は言われます。「子ども達にとって愛されること・食べることがいかに大事であるか。思春期の子ども達が起こす問題は思春期に起こることではなく乳幼児からはじまっており、思春期にはサインを出しているだけである。」
米国の作家レイモンド・チャンドラーは小説の中で「人は強くなければ生きていけない、やさしくなければ生きていく価値がない」といいました。あかちゃんが大好きな小児科医仁志田博司医師(東京女子医科大学母子総合医療センター所長)は「子どもにとってはやさしさがないと生きていく価値がないどころか生きていくこと自体ができない」といわれました。人は愛されて人間になります。愛されて育った子どもが人を愛することが出来ます。