「ゲーム障害という依存症」 ~ゲーム障害と依存症~

令和4年4月28日

 皆さま、はじめまして

 今月から4回連続で、ゲーム障害(ゲーム依存)についてお話させていただきます。第1回目は、「ゲーム障害と依存症―ゲームを禁止すればいいの?-」についてです。

 2019年5月、世界保健機関(WHO)は「ゲーム障害」を新たな国際疾病分類として認定しました。ゲーム障害とは、ゲームをする時間をコントロールできない、他の生活上の関心事や日常の活動よりゲームを優先するといった症状が1年以上継続することをいいます。症状が重い場合は1年以内でも該当します(樋口,2019)。ゲーム使用に伴う、コントロール障害(時間・課金問題等)とそれに伴う機能障害(体力の低下や心身の不調、社会参加の機会損失等)により、問題が長期化・深刻化する事例も多いです。やどりぎ開所の2019年から現在までの利用者統計をみると、オンラインゲームを利用する13歳から25歳までの相談者が約7割を占めています。中高生は保護者のみの来談が6割を占めますが、20代では課金の問題や勤め先とのトラブル等で社会的に行き詰って来談する事例が増えます。

 多くの方が、「うちの子はゲーム依存ではないか」と悩んで来所されます。ゲーム障害として、治療が必要なのは週30時間以上のゲーム使用が一つの基準になります。弊所では、ゲームの使用時間やゲームタイトル等も伺いますが、一番大切にしているのは「子ども自身にとって、ゲームをすることに、どんなメリットがあるのか」をみつけることです。

 ゲームに夢中になることで、ゲーム以外の活動時間は減ります。多くの場合、うまくいかない現実や自分の抱える問題に向き合わずに済むようになります。一方で、ゲームの中での交流が、子どもの避難場所・心の松葉杖として機能し始めます。依存症発症の背景には、「生きづらさ」があり、自分が依存する物や行動を「つらい現実から逃れるため」に使い続けることで、気づいた時には「やめたくても、やめられない」状態が生まれているといわれます。そのため、ゲームの禁止や制限だけでは解決にはなりません。

 ゲーム障害からの回復は、ゲームの禁止や制限を考えるよりも、子どもの抱える問題のケアやストレス対処法の選択肢を増やすこと、リアルの世界で同世代に限らず「つながり」を増やすことが役に立ちます。何より、日々子どもとゲームを巡って葛藤する保護者自身にも支援やケアが必要です。次回は、「ゲーム障害と依存症―今、私にできること―」として、ご家族の対応についてお話させていただきたいと思います。

樋口進(2019).病気認定されたゲーム障害の現状と今後,国民生活センター,6‐8

< 前の記事     一覧へ     後の記事 >