平成22年10月6日
養護学校小学部3年で知的障害のあるA君、言葉の数は豊富で、いつも教師に話しかけては笑い転げています。でも、教師の回答が一定のルーチン(※1)にならないと突然話すのをやめ、すっと離れて、別の教師に話しかけます。そして、自分の思うルーチンになるまで話しかけていきます。
彼の思うとおりのやり取りになると、彼の表情は、これ以上のうれしさはないとばかりに喜びに満ちあふれ、いつまでもいつまでも話しかけ続けます。また、自分のルーチンに応える教師を探し回るようにもなります。
その喜びを我慢させていいものかと迷うほど楽しそうなやり取りなのですが、その全く同じやり取りが4年近く続くと、さあ、考えものです。話し出すと、そのルーチンにならない限りうまくいきません。彼のルーチンをなくすにはどうしたらいいか、思い悩みました。
幸い2階に常設された巧技台(※2)がありましたので、毎日20分ほど、二人で運動することを考え、「天気いいね」、「風、気持ちいいね」など、彼が興味を持っている天気の話をしながら2階へと導きました。「待っててね」と何度か私が巧技台をしているうちに彼も巧技台に慣れてきたようで、3日目に初めて自分から巧技台を使い始めました。こわごわと、手を差し出し、支えを要求しながらの一歩でした。9日目からは、差し出す手を握らず、ゆっくりゆっくり進むことができるようになりました。毎日の繰り返しの中で、できるようになった自分を実感し、自信を持って取り組めるようになったようでした。この自信が、一学期の終わりにはルーチンにこだわらないA君につながりました。
※1 ルーチン・・・決まりきった手続きや手順。日課。
※2 巧技台・・・梯子や一本橋などが付いた運動遊具