~じっくり、たっぷりあそぶことは、子どもの財産!~第3回 体の動かし方、運動を「習う」?

平成20年7月2日

 かつては、あそびを通して自然に身につけてきた体の動かし方や運動をスクールに通ったり、家庭教師をつけたりして「習う・習わせる」時代に入ったことをうかがわせるようなマスコミ報道や調査報告が目につくようになっています。こうした中、2011年から完全実施される小学校学習指導要領改訂にともない、低学年、中学年の年間授業時間数が現行の90時間から105時間に増えることになりました。さらに、現行では中学年以降で位置づけられていた「体つくり運動」が低学年から導入されたことも改訂のポイントの一つとなっています。その背景には、「子どもの体力低下」「運動する子どもとそうでない子どもの二極化」といった審議過程での指摘に対応するために「低学年のうちから、基本的な動きを身に付けておくことが重要である」との問題意識が示されています。

 こうした学童期における「体つくり」の課題は、乳幼児期の課題とも共通しているように思われます。4~6歳の体力を1970年代から経年的に調査している近藤充夫氏らは、立ち幅跳び、テニスボール投げ、自分の身体を支える能力の低下が著しいと報告しています。私もこの数年、幼児を対象とした体力テストを実施していますが、数値の低下以上に、動きがぎこちない子どもたちが増えていることが気になっています。たとえば、肘や腕の曲げ伸ばしだけで投げようとする、投げる腕と反対側の脚を前に踏み出さず、棒立ちのまま投げる、中には、砲丸投げのようなフォームで投げようとする子どももいます。おそらく、こうした子どもたちは、ボールを「投げる」という経験だけでなく、「投げる」の動作につながるようなあそびの体験が不十分な環境の中で育ってきたのでしょう。かつては、石投げ、紙でっぽう、紙飛行機、メンコなどのあそびを通して、上手な子どもや大人のまねをしながら「投げる」動作を自然に身につけてきました。そして、先月指摘した「飛び降りあそび」が大好きな時期に、子どもたちを励ましてくれる大人もたくさんいました。そうした機会を、冒頭で示したように、キッズスポーツ産業にお金を払って「習う」ということが進んでいけば、体の動かし方や運動についても、学力と同様に幼児期からの二極化の懸念がでてくるようにも思われます。鐘ケ江 淳一

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