浦田 英範 先生

カウンセリングと子育て~カウンセラーの喜び~

平成18年4月3日

はじめに 

 前回で終わりと宣言しましたが、あと1回書くことになりました。題名を見ておわかりのように、子どもへの対応と言うより、我々対応する保護者やカウンセラーの喜びについてお話ししたいと思います。

カウンセラーとしての喜び

 この喜びは保護者と似ているのかもしれません。3月は卒業式、4月は入学式など別れと出会いの時期ですね。今回も私が担当した子ども達が卒業式を迎えました。小学生、中学生がほとんどですが、彼女たちから私は思いもよらないプレゼントを貰います。(毎年そうなんですが。)まず、一つは彼女たちの笑顔です。卒業式に参加できた者、できなかったけれど彼女たちのため学校が特別に卒業式をしてくれた者など様々です。彼女たちが「先生卒業式でられたよ!」(笑顔)「先生、卒業式でられなかった!でもあとで卒業式してもらった!」(ちょっとくすんだ笑顔)と報告に来ました。私は「よく頑張ったね!すごいじゃない。」と彼女たちのがんばりを認めます。彼女たちは一応に照れています。 ある時、中学生と進路について話していたら、「先生、僕、カウンセラーになろうかと。」私は「理由はなーに?」彼は、「僕は先生に出会えて助けてもらった。僕みたいな人間でも少しでも悩んでいる人の役に立てればと。」私は「いいんじゃなーい。そこまで考えているなら。でもね、先生は助けたつもりはないよ、貴方が頑張ったから、先生はどうしたら良いのか、先生なりの考えを伝えただけだよ。貴方が後は自分なりにやってきたんだよ!」と返しました。彼は目に涙を浮かべ照れ笑いをしてました。
 またあるとき、卒業文集を母親が持ってきて、子どもがこんな事を書いてましたと見せてくれました。そこにはカウンセラーになりたいと書かれてました。(この両方とも私の宝物です。)

最後に

 これで本当に最後になります。ここで言いたかったことは、子どもの笑顔、子どもの私への言葉、この2つは、私にとって形にはなっていませんが、私への表彰状です。この宝物を支えに、私はカウンセラーとして働いています。保護者の皆さんも子ども達からたくさんの宝物を貰ってらっしゃる事でしょう。この喜びを大切にして子育てをしてください。自分が疲れたとき、何をしているか分からなくなったとき、この事を思い出してください。自然にエネルギーが沸いてきますから。

 

どんな風にしたらいいの?-自分の考え方を掴む思春期-

平成18年3月1日

はじめに
 
 最終回になりました。早いもんです。なんか後半は、聴くこと、共感することばかり書いたような気がします。これがやはり基本なんです。話すここと相手が信頼してくれること。何故かというと、カウンセラーを信頼してもらわないと、心の専門家のアドバイスを受け入れてくれないんです。

先生!どうすればいいの?

 私のところに来る生徒は、「先生、どうしたらいいの。」と相談に来ます。これがほとんどです。私なりに答えをアドバイスすることは簡単ですが、彼ら自身が自分なりにどうしたいのか、そして、その結果がどうなるか予測させていくことが大切なような気がします。つまり、自己決定をするために、このことに対してどういう利点があり、また欠点があるか考えてもらう事なのです。これが問題解決能力を育てることだと思うのです。このことの繰り返しで、彼らは自分の考え方そして、価値観をも身につけていくと、私は考えています。

まとめにかえて
 この6回シリーズで言いたかったことをまとめてみました。下記に示す共感の効果です。

生きていることを感じ、実存していることの体験化。

新しい体験の統合化

コミュニケーションの質の向上


現実感の体験 

 共感するだけで彼らは、「自分って生きていてもいいんだよね。」と感じますし、「誰も自分の事わかってくれないと思っていたのに、このおっちゃんわかってくれるんだ。人を信用してもいいのかなぁ。」そして、自分の気持ちを下手なりに相手に伝えることができる。そして解りあえ、自分の心の中で考えていたことを、相手に話すことで現実的な考え方になっていくのだと思います。
 少々題名からはずれたのかもしれませんが、これらの事が子ども達の心の成長と信じて、私はカウンセラーをやっています。つたない文章を読んで頂いた皆さん、有り難うございました、そして何か皆さ2006/3/1んの子育てのヒントになったのであれば幸いです。

 

俺って異常?-性に戸惑う思春期2-

平成18年2月1日

はじめに

 先回は、女の子の性の戸惑いを書きました。私は彼女たちの父親と同じ世代か上の世代になります。それなのになぜ彼女たちは、私に相談できるのでしょう。それは、カウンセラーだからです。ただそれだけではありません、このおっちゅん、話せるやん!話分かってくれるやんと彼女たちが思うからです。

ある雑談から

 私がスクールカウンセラーをしている学校では、昼休みや、授業時間の休み時間、カウンセリングルームを生徒に開放しています。ある日、3年生の数名のグループが昼休み訪れました。(問題行動を起こしている子ども達です。) 彼らが、私に「先生、奥さんいるの。」「週何回エッチしてるの?」など。ここでは書けないエッチな質問をしてきました。私は、うーん、奥さん若干1名かな?エッチな話はそう簡単に教えられんなぁ-などとかわしてました。多分彼らは私がどんなカウンセラーか試していたのでしょう。しかし、次第にいろんな話をし始め、私はにこにこ笑いながら、そうだね!などと相づちを打ってました。
 ある日、また彼らが訪れました。この時は、また、SEXの話やエッチな話、女性の裸体の話になりました。私は、大声で笑いながら、あるある先生も中学生の頃あった!あった!そう考えた日々が。そして、こう付け加えました。先生ね、中学校の頃、自分がエッチな異常な人間なんじゃないかと思ったよ、と話しました。彼らは一様に「俺たち異常じゃないってい。」と安心してました。私は、そういう話は、場所をわきまえないとね、いつでもどこでも話してはいけないと思うけど、どうかなぁ?と伝えました。しばらく彼らは考えて、「うん」と言いながら退室しました。

第三者的なおっちゃん! 

 私は、同じ目線で、いや、同じ精神年齢かもしれませんが?彼らと共感しながら話をします。そして、自分の意見を押しつけるのではなく、こういう考えもあるよと提示します。そして、彼らに考えてもらいます。これが彼らの考え方の幅を広げるやり方です。

 

 

なぜ人とつきあいたくなるの?-性に戸惑う思春期1-

平成18年1月5日

はじめに
 
 今まで3回に渡って、子ども達の自意識や考え方、そして感じ方をカウンセラーとして、どう成長をうながすかについて簡単に話しました。誰かが聴いて話すことで彼らが成長していくのだと述べました。

なぜ人と付き合いたくなるの?

 「なぜ人と付き合いたくなるの?」この言葉は、ある女子中学生の私に対する質問でした。私は、戸惑いながら彼女にもう少し詳しく聞かせてと質問しました。彼女の言うにはこういう事でした。小学校の頃は人を好きになるだけで、ただそれだけでうれしかったし、楽しかった。中学生になって、特に好きな人ができると付き合いたくなるんだというのです。彼女は戸惑っている様子でした。この質問に、私もいささか答えに窮しました。いわゆる、思春期の性への戸惑いや性的欲求に関する質問だったからです。思わず思春期だからだよっと咄嗟に言いました。彼女は「先生意味わからん!」と言いました。そこで、私は、第二次性徴期のこと、子どもから大人になる間が思春期でこういう戸惑いが起こるのだとゆっくり彼女と話し合いました。そして、彼女にこの戸惑いは誰でも起こっていることで当たり前の事なんだよと伝えました。
 彼女が「先生にもあった?」と聞くので、うんあったよ。すごく困ったけどね。と二人で微笑んで、カウンセリングは終わりました。

一緒に悩むことで 

 今までと同じですが、我々ができることは、子ども達と一緒の目線になって感じたり、考えたりして、一緒に悩んだり、戸惑ったり、時には、人生の先輩として、考えや経験を共有する事だと思うのです。これらが彼女たちの考えや感じ方の幅を広げることになるのだと思います。

先生!むかつく!

平成17年12月1日

はじめに 
 今回3回目を書くことになりました。一つ皆さんに断っておかなければならないことがあります。ここで話す事は、私と子どもの実際です。カウンセラーは守秘義務があり、カウンセリングで話した事は話せません。ここで述べていることは、了解が取れていることをお断りしておきます。

感じ方を育む

 さて、「むかつく!」と言いながら私の所に来る生徒は、ものすごく多いです。先回は、どう考えるのか、おっちゃん的な視点で尋ねてみると言いました。今回は、彼らの感じ方のことをお話しします。「むかつく!」と言っても、その出来事や感じ方は様々です。これもまた、おっちゃん的対応です。私が、どうしたの?何があったの?そりゃー腹立つね!それでどうしたの。怒り治まったの?など詳しくゆっくりと彼らの心の声に耳を傾け、彼らの気持ちを汲むようにして話していきます。これらのことで、彼らは、自分の気持ちと対話し、人に伝えなければなりません。そうすることで彼らは自分の感情と向き合い整理し、自分の感情と付き合っていけるようになります。

自分が自分であること

 今回のことも含めて、思春期の子ども達は、自分の考え方、感じ方を創っていくのだと思います。つまり、これが、彼らが自分らしくなること、自分探しの一つになると思います。そのため、私は、彼らの心に耳を傾け、彼らが、言葉にできない気持ちを汲みながら、彼らが、その気持ちを言葉にできるように支援しています。それが、彼らが自分という人間に出会うと言うことだ信じているからです。

あー言えばこういう!-反抗期という名の思春期-

平成17年11月1日

はじめに
 「先生!」どうしたのと、カウンセリング室に遊びに来たAさんに、私が尋ねました。「だって、お母さん、わかってることばかり言うんだもん。」そう、わかっていることなんだけど言われると言い返したくなるんだね。「どうして言い返したくなるんだろう?。」
 こういう会話が、カウンセリング室では飛び交うことが少なくありません。時には、親と話すのはいやだという子もいます。
 保護者の方々と話すと、どう話して良いか分からない。扱いづらいとまで言う保護者もいます。大げさでも何でもありません。保護者も戸惑っています。

価値観への模索
 これらの現象は何を意味しているのでしょうか?思春期という時期は、子どもから大人になる時期です。第1回目でも言いましたが、人が自分のことをどう見るか?(自意識)が強くなるといいました。この延長上に、思春期の子どもたちは、自分の考え方、親や大人の考え方を一度否定して、その考えがいいのか?どうなのか?1回疑ったり、否定したりして、自分の考えや価値感を創ろうとします。これらの子どもの価値感など形成されていくのです。自分自身の価値観を創り上げるために、彼らは、大人、特に保護者が言うこと(これらの考えがが常識的であっても)を一旦否定したり、疑ったりしているのです。

どう付き合うか?
 私はこれらのことを理解していますし、カウンセラーとしては、隣のおっちゃん感覚で対応します。まず、子どもは何を言いたいのか?何をしたいのか?どんな考えを持っているのか?等ゆっくり聴きます。そうそうと言いながら、ゆっくり聴きます。そして、彼らが言ったことに頷きながら、<あなたの考えは分かるけど、僕はこう思うけど、どう思うと>私は自分の考えを提示しながら、彼らに考えてもらうようにしています。こうする事で彼らが考える力が育まれ、彼らなりの価値観が育っていくのです。

何で周りが気になるの?

平成17年10月1日

思春期の始まり
 今回、私が思春期の子ども達とのカウンセリングを通して、子ども達の戸惑いを6回話していきたいと思います。これらが皆さんの子育てのヒントになればとも思います。
 
 子ども達の悩みは様々です。友人関係、教師との関係、親子関係、部活関係など様々です。その中で子ども達と話すと、「お母さんに相談すると、何で大人はそういうんだろう。むかつく!」「何で大人は本音と建て前を言うの?」等様々な戸惑いがあります。また、保護者との相談では、「あー言えば、こういうって感じで言い返すんですよ。」「子どもと特に思春期の子どもとどのように付き合ったらいいのか。」など保護者の方も戸惑っています。

 思春期はいつ頃から始まるのでしょうか?個人差がありますが、小学校5年生の頃から思春期が始まります。まず大きな特徴として、俗に言われる第二次性徴期がその時期の始まりです。女の子は、初潮が始まり、女性らしい体つきになります。また男の子は、声変わりが始まり、筋肉質の男性らしい体つきになります。

 体の変化は、子ども自身も保護者も気がつきますが、心の変化が気がつきにくいのです。この心の変化が彼らの行動に表れてきます。例えば、相談は今ままで親にしていたものが、次第に友達に相談するようになります。また、親とはあまり話さなくなってきます。特に男の子はその傾向が強いようです。また、中学校でよく出会うのですが、櫛や鏡を持って登校している子どもが多いのです。特に女子が!でも男の子でもこの傾向はあります。

 体の変化に伴い、子ども達の心の変化に子ども達自身が注意を払います。これが自分に対する意識(自意識)が強くなる始まりです。それと同時に周囲が自分をどう思うか等の気持ちが強くなり、自分の容姿に敏感になります。