上田 晃三 先生

「子どもたちの規範意識を高める関わり方」~学校経営を通して見えてきたこと~4

平成24年4月5日

 まず、「器物破損」がなくなったことについてです。

 例年文化祭では全生徒でひとつの作品を作っていましたが、その作品を誰でもが触れられるように、玄関ホールに飾ることにしました。それらが、10数年経った現在でも、いたずら等による破損もなく見事に残っています。ここでは、生徒を信じることの大切さも痛感しています。

 次に、「地域のために頑張ろう」「地域の人たちの期待に応えよう」についてです。ここでは部活動との関わりが中心になります。
 音楽部は、敬老会や福祉施設、小学校や幼稚園・保育所への出前演奏、公民館祭への参加等、陸上部は住民運動会の役員補助、放送部は住民運動会や公民館祭、幼稚園運動会の進行係等で活躍しています。

 最後は着任4年目、この学校での最後の卒業式でのことです。その年の卒業学年にも不登校の生徒は多数いました。しかし、式辞の途中で、不登校だった生徒も入場し着席しました。校長として9回の卒業式を経験しましたが、全員参加の卒業式はこの時だけです。先生方や保護者、そして地域の関係者に対する感謝の気持ちで胸がつまり、式辞の後半は、涙で声が出なかったことを思い出します。

 ロナルド・エドモンズの『効果のある教育実践』との出会い、教師の「率先垂範」と「チームワーク」、そして「目標の共有化」により、生徒達の規範意識は確かに高まったと感じています。

「子どもたちの規範意識を高める関わり方」~学校経営を通して見えてきたこと~3

平成24年3月7日

 また、『効果ある教育実践』の中には「目標の共有化」の大切さも謳ってありましたが、夏休みには学級ごとに教師と生徒が一緒になって教室や廊下の壁塗りをする。美術部は下足室に明るい絵を描く、我々が終わる頃にはすっかり「目標の共有化」はできていたように思います。

 有り難いことに、この校区は公民館活動が盛んなところで、学校に対する協力体制も強固なものでした。そこで次の手立ては、この地域の教育力を活用することでした。青少年育成会には子ども会のお世話をする「子ども会リーダー育成事業」を通して、積極的に地域に貢献する多くの生徒を育てていただきました。また、青年商工会には職場体験学習のお世話をしていただいたり、何人かの方々からは仕事や生き方等を学ばせていただきました。土曜日には公民館事業として、中学生のための数個の講座も開設していただきました。

 このようなことの積み重ねのおかげで「地域のために頑張ろう」「地域の人たちの期待に応えよう」という意識が芽生えたような気がします。

 次回は、その後、学校はどう変わったのか、生徒達はどう成長したのか2,3の例を挙げて書こうと思います。

「子どもたちの規範意識を高める関わり方」~学校経営を通して見えてきたこと~2

平成24年2月14日

 次に「チームワークの大切さ」ですが、教職員の気持ちが「率先垂範」でまとまったことが大きかったと思います。

 私自身は、この中学校に着任した4月1日の朝から、学校敷地内と100メートル程の校門坂のゴミ拾いを始めましたが、前述したようにタバコの吸殻にはびっくりしました。数日後の始業式では、女性の生徒会長が、「私も校長先生と一緒にタバコ拾いをします。」と宣言しました。「黙って拾い続けよう、生徒達は必ず見ているから。」とバケツと火バサミを持って二人で黙々とタバコ拾いを続けました。まもなく生徒会役員も交代で加わるようになり、1学期が終わるころには、見事に学校内から吸殻がなくなりました。

 また、1学期が始まってまもなくの頃、ある教師から「職員朝礼も全職員が起立し、大きな声で挨拶をしてから始めましょうよ。」との提案がありました。教室では「起立、礼」で朝の会が始められていたのですが、職員朝礼は何となく始まっていたのです。誰一人、異を唱える者もなく、その朝からの実行でした。他の教師からも「掃除は時間いっぱい生徒と一緒にがんばりましょう。」「チャイムと同時に授業を始めましょう。」と続きました。教職員の明るく元気な朝の挨拶、時間厳守や生徒と共に活動する姿は、生徒達のその後の行動に好影響を与えてくれたと確信しています。教職員の「率先垂範」と「チームワーク」、

 このことも生徒達の規範意識を高めるために大いに有効でした。

「子どもたちの規範意識を高める関わり方」 ~学校経営を通して見えてきたこと~1

平成24年1月30日

 学校では、道徳の時間を中心にしたすべての教育活動を通して直接、また間接的に規範意識の涵養に努めています。
 私は、このことを生徒指導の柱として取り組んだ中学校長としての実践の一端を紹介させていただこうと考えています。

 校長として2番目に着任した中学校はいわゆる荒れた学校で、校内での喫煙や故意の器物破損のすごさには特に驚かされました。したがって、学校経営の重点課題もこの2点の解消・撲滅でした。その当時、米国人ロナルド・エモンズが発表した『効果ある教育実践』が教育界を風靡していました。私は、その中の「環境とチームワークの大切さ」に注目しました。そこには、「汚れた物、壊れた物はできるだけ早く補修・整備すること」とありました。

 当時の教育長は、中学校長時代、絵画や書道の作品で環境を整備し、生徒指導に大きな成果を残された方でしたので、私の考えに全面的な支援をしていただきました。廊下や教室の床板・壁板、階段のスレート、ガラス、蛍光灯、スイッチカバー、トイレットペーパーホルダー、トイレのドア、等々。破損したらすぐ補修、「丈夫さ」より「きれいさ」を優先した物を使う。その後の器物破損は皆無と言ってよいくらい、なくなり現在に至っています。まさに、「環境は人をつくる、そして、その環境は人がつくる」そのものだったと思います。

 『効果ある教育実践』を参考にした「環境整備」の取組は、生徒達の規範意識を高めるために大いに有効でした。