森 崇 先生

第4回 「食と生命」

平成26年6月20日

 若い人の心身の病気を診ていると、食生活の乱れのある人に、かなりの確率で心身の病気が発症している傾向が見られます。乳幼児期からきちんとした食生活がしつけられていて、その人の存在感があれば病気等にならないだろうと考えています。

 まず、食は毎日規則的にきちんと朝、昼、夕と3回取らせることが望ましいです。しかも出来るだけ家族が揃って楽しくいただけるとよいでしょう。食べることは人との関わりを持ち、その時の感情も学習するものです。出来るだけ「快」の感情と食とはつなげてあげたいものです。

 例えば、子どもが泣いた時とか、陰性の感情を持った時に、変にお菓子やケーキ等の食べ物を与えると、子どもは無意識に食べ物と感情をつなげてしまい、その後の生活に影響を与えてしまうものです。過食症の若者を見ているとこの傾向がよく見られます。何か気に入らないこととか、陰性の感情が出てきた時など、すぐに食べ物に走り、食べ過ぎる傾向にあるようです。

 食べ過ぎは肥満につながり、自分の容姿に気を遣い、そんな自分を嫌だと思うようになるのです。結果、太らないために食べたものを吐いてしまいたいと思い、食べるたびに人に内緒で食べ吐きを繰り返すようになるのです。この傾向が、思春期に顕著に現れやすいのです。しかもこの食行動に異常を持つ人たちは、自分の存在を否定したり、自傷行為をしたりする可能性も多く出てくるのです。

 出来ることなら、幼児期から食と感情と生命が多く関連していることを大人はきちんと教え育てることが望ましいものです。

 難病とも言われている「神経性無食欲症」があります。しばしば、この病気のために命を落とす若者もいます。あまり原因がわからないと言われています。

 私が診てきた人の中では、幼いころから生きることを否定されていたり、食べることは悪いことだと、親や周囲の大人から言われたり、太ることはいいことではないと伝えられたりしている傾向があるようです。

 「神経性無食欲症」になると、少食から食べたものを吐くことになり、体は痩せの傾向になり、それでも痩せているという自覚はなく、周囲の人に心配をさせるようになりがちです。心は頑固で人の言うことを聞かない性格傾向になりがちです。

 このような痩せ症を作らないためにも、乳児期から人を信じられるようにスキンシップを図り、抱いてアイコンタクトをしてあげるとよいでしょう。言葉がわかるようになった時には、子どもの前でその子を否定するような言動はさけてもらいたいものです。

 もしも小学5年生頃の成長段階で、自分の容姿を気にかけ始め、少食になりだし、気分にこだわりを持ち出し、少し頑固な傾向があるようならば、お医者さんに相談することをおすすめしたいと思います。

2014/06/20 森 崇 先生

第3回 「 性の問題」

平成26年5月14日

 若者には欠かせない問題の一つです。

 「『生』にりっしんべんの心が付く」と「性」になります。生きる心です。英語で言えばsexualityです。生まれてから死ぬまでの生き方を意味しています。今のような情報多き時に、若者はどんな生涯を生き抜くか考えているでしょうか。

 親にとってかなり問題の多いことと考えています。昔から子どもは親の背中を見て育つと言われています。親は自分の生き方に満足しているのでしょうか。統計的には80%の人が不満を持っていると考えられています。出来ることなら、親にとっても一度の人生です。何か一つにでもいいから、夢中になる時間を持ち、生きていてよかったと言えるような生き方をしてもらいたいものです。

 親が不平不満を子どもの前でつぶやくようであれば、子どもは自分が生きていることに否定的な感情を持つ可能性があります。と言うことは、大脳辺縁系の中枢が不快の感情を持ちやすく、怒り、寂しさ、劣等感等自己否定的な感情を学習することになるのです。

 可能な限り親は今を楽しい感情にして、子どもに生きていてよかったと感じさせることが必要です。もし、楽しい感情がもてない場合、大脳辺縁系の下に存在する動物的な生きている本能である性欲、物欲、食欲、睡眠欲等、動物がいつもやるような行動になりがちです。となると、家庭での生活が思うように行かなくなり、いろんな歪みが出るようになります。思春期になる若者は、自己コントロールができなくなり問題行動に走ることが多くなります。親たちが、本当に生きていてよかった何かを持ちたいものです。

2014/05/14 森 崇 先生

第2回 「若者の問題点を解き明かすには」

平成26年4月18日

 若者の問題は、不登校、いじめ、心の疾病、心身の疾病、性的な障害、精神疾患など様々なものがあります。どのような場合でも、若者自身が悩み、苦しんでいるのです。

 親であれば少しの若者の変化にも気づいてあげることが可能であろうと思います。一つには表情でしょう。一番感情が現れるからです。感情には快と不快があります。時にこの感情が、言葉、態度、行動等にあらわれます。親はこの状態を無視したり、逆に叱るなら良いが感情的になり怒ったりします。となると若者はこの感情をエスカレートさせるか、内向化したり、体に症状があらわれたりします。

 出来ることなら、いろんな変化があるときには、そのありのままの状態を受け入れ、親が自分を主語にして、あなたのことが心配なのと言葉かけをすることが望ましいと考えます。どんなことでも、受け入れることが始まりです。頭から否定をすると、若者は反抗するものです。あるものがたとえ間違っていたとしても受け入れることにより、若者の心をほぐすことが可能になり、若者の心の理解につながるものです。

 このことは、言葉では簡単なことですが、いざ実行しようとするととてもむずかしい事だとわかるものです。普段から親は若者を理解する心がけが大切になるものです。例えば、若者が万引きしたとしても、「万引きをした」という事実だけで叱るだけでなく、「なぜ万引きをしたのか、その若者の背景にある理由」も理解しようとすることが必要です。

2014/04/18 森 崇 先生

第1回 「思春期の若者とその親たち」

平成26年3月31日

 思春期の若者はだいたい中学生か高校生です。中学生は義務教育の真っただ中にありますし、高校生は大人の一歩手前であります。おのずと子どもとの関わり方には違いが出てくるものです。また、親は母親と父親でひとりひとり大きな違いがあります。どのような学歴があるのか、仕事をどのようにこなしているか、経済的に親子関係がどのようになっているのか、生活環境がどんな状況であるのか、親の性格がどのような人であるかによります。もし若者に問題が生じて、その親から相談を受けたとしたら、いろんな側面を考慮しながら、相談にのるなり、対応を考えることが重要な一つになることは当たり前かもしれません。

 でもこれらは、ある意味で個人情報になり、簡単には聞き出せないものです。となると、どのようにしたらいいのかの問題になります。そして、問題の主人公が誰であるかが焦点になってきます。こう考えていくと、問題の原因が、親自身にあっても、若者が自分自身で問題を解決する動機をもつようにすることが望ましいのです。

 ややもすると、親が不安をもったり、必要以上に若者のあり方を考えたり、冷静さを失ったりすることがあります。このような場合は、親の話を聞いてあげ、親の心配、不安がどのようなものなのか充分聞き出すことが必要です。この時に、相談者は余計なこと言わないで全てを受容することが望ましいのです。

 まず親たちが客観的に自分たちのあり方を見ることが、若者を理解する入口になるものです。一口で言えば、若者がどのような環境で育ってきたかを知ることなのです!

2014/03/31 森 崇 先生