河波 陽一 先生

4.「運動をすることが子どもの健康・将来に影響することについて」

令和5年3月23日

 これまで、子どもが家の中で出来る軽い運動や親子で楽しめる運動など、普段から少しでも体を動かし、体の老朽化を防ぐことが大切だと伝えてきました。現在、子どもの運動時間が減少したことで体の老朽化問題が発生しています。そのような中で、子どもの将来に向けての目標は、健康的な身体の獲得があってこそ達成できると思います。もし、このまま子どもロコモが進んでいくと、今の子ども達が社会人になる頃には、20代で生活習慣病の発症、労働するための体力不足、免疫力低下による感染症等に悩まされ、普通に仕事する事が困難となるでしょう。また、子どもが巣立っていくのではなく、家庭に残り続け、親が子どもの看病をする、ニートになり養育するなどが考えられます。子どもの運動不足だけでなく、若年層の病気・ニート・ひきこもりなどのケースが年々増加傾向にあるのも現実です。

 そのようなことからも、子どもの将来を考えることは、第一に健康が大切となり、健康のために『食べる』『寝る』はもちろんのこと、『運動する』ことも意識しなければなりません。最近、『あまりご飯を食べない』『家にいる時間が長く、太った』『寝るのが遅い』など、子どもの生活習慣の悩みをよく聞きます。本来、子どもの理想的なサイクルは、『外でよく運動するから食べる』『外でよく運動するから寝る』であり、栄養摂取と睡眠の質向上は、運動することによって健康的な生活習慣に結びついています。しかし現状は、『外で遊ばないからお腹が空かない』『体が疲れてないから眠くならない』『エネルギーを消費してないのに過剰に栄養を摂取して太ってしまう』と1日の運動時間が短いことが生活習慣に影響し、体の老朽化の原因の1つとなっています。

 日頃から『運動をしなさい!』『外で遊びなさい!』と言っても子ども達には響かないことが多く、どうすれば運動習慣が身につくのか悩まれていると思います。子どもは目的があって、夢中になれるとしっかり動いてくれますので、まずはお家でできる簡易的な運動から、親子で運動する機会を増やすことから始めてみましょう。親子で一緒に運動する時は指導しすぎるのではなく、楽しむ事を目的に自然と運動に馴染めると子どもは運動が好きになりますので、これまでの記事を参考に是非実践されてみてください。

 最後まで記事を読んでいただき誠にありがとうございました。少しでも皆様の参考になれば幸いです。

3.「子どもの運動時間を増やすために親子で楽しくできる運動方法!」

令和5年度3月7日

 子どもが1日に必要な運動時間は、どれぐらいかご存知でしょうか?学校体育の時間を除き1日60分、1週間で420分必要とされています。令和3年度の小学生の1日の運動時間の平均は、なんと47.8分でした。子どもロコモ(老朽化)の始まりは、年々身体を動かす時間が減少していることであり、現状はさらに深刻化しています。これからは、意図的に運動する時間を確保し身体を動かす事も、子どもの老朽化を防ぐために必要となってくるでしょう。

 そこで、親子で楽しく運動するためのコツがあります。親子で楽しく運動する方法は『一緒に運動をしよう!』と誘う事です。漠然としていますが、楽しく運動するためにはとても大切になります。ここで、気を付けなければならないのは、子どもから聞かれた事以外のスポーツは教えない事です。なわとびの跳び方やボールの投げ方など、一方的に親から子へ教えてしまうと子どもは反発し、親子間で言い合いになり揉めてしまう事もあります。そうなると子どもに「親と運動をすると楽しくない」という印象を与えてしまいます。

 親子で楽しく運動するために、一緒に散歩がてら歩いたり、ジョギングをしたりするのも良いでしょう。また最近ではジムに行く人も増えているので、公園の遊具などがある健康エリアで一緒にトレーニングするのも良いでしょう。

 親子で運動を楽しく行うには、同じ立場に立って体を動かすという事が大切です。分かりやすいのは、親子でボーリングやバトミントンをしている時ではないでしょうか。子どもは親と一緒に運動する事で楽しく体を動かす事ができるので、是非試してみてください。

 次回が最終回となります。総まとめとして、これからの子ども達が、運動を通してどのように健康と向き合っていくか、また、子どもロコモの防止が今後の成長にどのように影響していくかについてお伝えします。

2.「子どもの老朽化を防ぐための姿勢改善」

令和5年1月31日

 前回、子どもの老朽化が進む『子どもロコモ(ロコモティブシンドローム)』についてご説明しました。今回は、具体的にどのような事から、改善していくべきかをご紹介していきます。

 皆さんが子ども達を見ていて、姿勢が悪いと感じた事はありませんか?猫背などの子どもの姿勢の悪さは、運動不足とは別の要因が、体の機能に関係している事はご存知でしょうか?

 姿勢が悪いからと、子どもに「背筋をピンっとしなさい!!」と言うことは、実は姿勢を正すのに効果はありません。逆に、ピンっと無理に背筋を伸ばす事は、脊椎を自然な状態から離してしまう行為のため、かえって『反り腰』になり腰痛やスポーツ障害に繋がりやすくなります。姿勢こそ、自然に正さなければなりません。

 姿勢を正すためには『足の指』と『顎』をよく動かす環境をつくる事が重要です。人間の正しい姿勢は、足底と顎のどちらか1つでも上手く機能していないと悪くなってしまいます。足の指が器用に動かせない事で土踏まずが浅く(扁平足)、重心の位置が定まらない、左右の顎の動きが悪い、または左右差がある事で、噛み合せが悪いと脊髄に関わる首・肩・腰に異変が起こる可能性が高くなります。

 そこで、簡単な改善策をご紹介します。まず、足の指の場合は、裸足で指をよく動かす習慣を付けることが大切です。例えば、家の中では必ず裸足になる、夏の外履きは草履・サンダル等の裸足に近い履物を使用する、親子で足指じゃんけんをして遊ぶ、寝る前に足指サポーターで指の間隔を広げる、などが効果的です。そうすることで、足底の土踏まずが上手く形成され、体重が足底にしっかり乗りやすくなり、脊髄に負担なく背筋をピンッと張る事が、苦ではなくなります。

 次に、顎の場合は、子どもの顎を手で触れて動きを確認することや普段の食事の中で、『よく噛む』『顎は動いている?』など、声掛けしてあげることが大切です。

 このことを気にかける事で子どもの姿勢は自然と良くなってきますので、是非試されてみてください。

 また、姿勢が良くなるという事は、運動においても力が上手く伝わりやすくなるため、運動機能向上のきっかけともなります。

 次回は、老朽化を防ぐための子どもの運動習慣を促すきっかけや、運動したくなる親子間での運動時の言葉掛けについてご紹介します。

1.「老朽化の背景から将来的におこりうる問題」

令和4年12月23日

 皆さんは、「最近の子ども達について、少し体力が低いな、すぐケガをするな、何でこんなに動きが鈍いのだろう?」と疑問に思った事はありせんか?子ども達の体力が年々低下傾向にある事はもちろん、骨や関節などの運動器の動きがおとろえて、立つ、歩くなどの日常的な行動が行いにくくなるといった『身体の老朽化』が進んでいます。この様な問題を『子どもロコモ(ロコモティブシンドローム)』といい、現代における深刻な問題の一つとされています。本来は高齢者を対象に用いてきた『ロコモ』という言葉を、『子ども』に用いているのです。

 これらの問題は、幼児・小学生の頃の運動量が関係しており、運動不足により健康状態が悪化する可能性が非常に高くなります。また、新型コロナウイルスの感染拡大から、運動不足を改善するための環境は縮小傾向にあり、運動をする事への動機付けも、感染予防の観点から慎重にならざるを得ない状況が続いているため、子どもの『身体の老朽化』が進んでいく一方です。

 そうなると子ども自身の問題だけに限らず、子どもが成人した以降も、本人ではどうする事もできない家族全体の大きな問題になります。例えば、外に出てお友達と遊ぶ機会が少なかったことから精神的要因で引きこもりやフリーターになる、身体の老朽化から病気に繋がるなどが挙げられます。子どもの成人後の生活費や治療費など家庭の経済面に大きく影響し、学費とは別の出費が重なることで身体への問題だけでなく経済的な問題にも関わってくるでしょう。

 そこで、次回からは、簡単にできる運動や生活習慣など、子どもの身体の老朽化を防止し、運動機能が通常に働くための方法を何点かご紹介していきますので、是非、参考にしてください。