藤嶋 クスヱ 先生

~家庭教育のあり方について-子どもを伸ばす親のかかわり方-~第6回 待てる・耐えられるなどの自己コントロール力を持った子どもに育っていますか?…

平成20年10月5日

 現在、キレる子どもが増加しています。自分のおもいどおりにならなかったら、すぐ怒ります。友達関係でも気にさわるとけんかを始めます。
待つとか耐えられるなどの自己コントロール力が培われていません。
 その原因として、欲しいものは何でも与えられ、したいことはさせてもらい、嫌なことはしないでいいと言われ、恵まれすぎた環境で育てられているからではないでしょうか。
 しかし、子どもが大人になって生きていく社会は、決しておもうようにならないきびしいものです。
親は、子どもの将来を見すえて、「七転び八起」ころんでもころんでも、自分の力で起き上がっていく底力をつけてあげなければなりません。

 何年か前に総理府が「家庭の教育力が低下している理由」を全国20歳以上の約5500人にたずねた結果が発表されていました。
 過保護、甘やかせすぎな親の増加65%・しつけや教育に無関心な親の増加35%・外部の教育機関に対する教育の依存33%・親子がふれあい、共に行動する機会の不足32%・教育に自信を持てない親の増加30%・教育の仕方がわからない親の増加28%・父親の存在感の低下27%などの現状があきらかになりました。
 この結果から親自身、子どもをどのように一人前の人間に育てるか一環性のある養育態度のあり方が問われています。
親として言うべきことを、はっきりと言い、してはいけないことをしたら叱るという親の義務が果たされているでしょうか…。
日々、生活の中で我慢することの大切さも身につけさせなければなりません。
 「育てたように子は育つ」と相田みつをさんは言われています。
 待てる・耐えられるなどの自己コントロール力を持った子どもは、自分を信じ、精神力の強い人間に成長していくことでしょう。

~家庭教育のあり方について-子どもを伸ばす親のかかわり方-~第5回 子どもの目が輝く心のエネルギーを与えていますか…

平成20年9月2日

 子どもが、いつもいきいきと目を輝かせ何事にも意欲的に取り組んでいる姿に接すると親は、たいへん喜びを感じます。
 逆に、自信がなく物事に対してやる気を出そうとしない子どもにイライラしてきます。
 「やる気を出しなさい」「しっかりしなさい」と、子どもに向かって言っても変わりません。
 子どもが、積極的にやる気を出す行動の原動力は、心のエネルギーです。
 何が心のエネルギーになるか、どんな時にやる気がわいてくるか考えてみましょう。

 まずは、親と子の絆がしっかりつながり、自分の背中をつよく、支えてくれている大きな手を感じた時です。子どもは、どんなことにも立ち向っていきます。
 しかし、家庭の中でトラブルがあったり、両親の仲が悪かったり、心配ごとがあると、そのことに気を取られ不安定な心になります。
 何の気がかりもない安心できる家庭の雰囲気が大切です。
 安定した家庭で育った子どもは、快々として目を輝かせ、心のエネルギーを出します。
 また、親が子どもの気持ちをよくわかってあげ、存在そのものを大事にしてくれていることです。
 親から、「あなたはやればできるね。すごいね。」などとたくさんの花マルをつけてあげると、心のエネルギーを積み上げていきます。
 そうなると、自分自身に対して「ぼくはやれるんだ。」と自信を持ち、どんなことにも挑戦し、心のエネルギーを燃やし続けます。
 このように考えてくると、子どもは、家庭でほめられたり、認められたり、生かされたり、くつろいだりなどのリフレッシュできる心の居場所があることです。
 それが、元気よく外に向かってやる気を出す心のエネルギーを与えています。
 心のエネルギーをたくさんもらった子どもは、目を輝かせ心豊かに育ちます。

~家庭教育のあり方について-子どもを伸ばす親のかかわり方-~第4回 親の育児態度は子どもの性格形成に大きな影響を…

平成20年8月1日

 子どもは、自分の生活環境に合わせて、一人前の人間に育っていきます。さらに、親の育児態度は、子どもの性格形成に大きな影響を与えます。まさしく、子どもの性格は親がつくります。
 具体例を通して考えてみましょう。

 例えば、親が子どもの能力以上のことを要求し、いつも命令して動かし厳しく接します。親が、子どもを支配しすぎている事例です。このような親の接し方は、子どもの性格形成にどのような影響を与えるでしょうか。
 子どもは、失敗したらどうしようかとおもい、劣等感を抱き、うかぬ顔の暗い性格になります。また、命令する人がいないと一人では、何も決断できません。自発性に欠けてきます。

 つぎは、子どもに服従しすぎている親についてはどうでしょうか。
 親は、何でも子どもの言いなりになり、我慢をさせることができません。猫っ可愛がりをし、ペット的な育て方です。
 そうなると、子どもは、自己中心で他人への思いやりを持てません。自分の要求が通らないと、かんしゃくを起こします。忍耐力に乏しく、あきっぽい無責任な性格になります。

 紙面の都合上、二つの事例のみですが、みなさんは、どんな性格の子どもに育って欲しいと願ってありましょうか。

 子どもは、親から二つのルートを通して、行動を学んでいきます。
 一つは、望ましい行動をした時は誉められ、してはいけないことをしたら叱られたりする善悪のけじめの直接学習です。
 二つ目は、親の行動を子どもが観察して学びます。毎日の生活の中で見せる親の姿は、子どもにとって手本であります。親のつぶやき・しぐさ・仕事ぶりなどの真正面の姿・横顔・後姿をよく観察して学び身につけていっています。
 親の育児態度が、子どもの性格形成に影響を与えるとあれば、親としてなすべきことをし、してはいけないことをしない親であることを心に留めておきたいとおもいます。

 

~家庭教育のあり方について-子どもを伸ばす親のかかわり方-~第3回 言葉は生きています。こころを育む言葉を子どもに根づかせていますか…

平成20年7月2日

 5・6年生の担任をしていた時の子どもに、何十年ぶりかで再会しました。
 開口一番に「今の私があるのは、先生のお陰です。先生は、あなたはみがけば必ず光る人ですと、毎日のように言ってくれました。私は、中学・高校・大学とその言葉通りに自分をみがきました。」と、話してくれました。
 教え子のこころに、私の言葉が生き続けたのです。

 現在、子どものこころを育むということをよく耳にします。
 こころというものを、どこから持ってきてそれを育てるかのようですが、そうではないのです。
よいこと、望ましいことをくりかえし、くりかえし刷り込んでいきます。そして、いつの間にか根づいて習慣化され、にじみ出るように生まれてくるのがこころです。
 そこで、日頃、親として子どもにどのようなことを言っているか、また、どのように関っているかを意識してみてはどうでしょうか。
 さらに、親の言っていることを子どもが、どう感じているかも聞いてみることです。
 具体例として、「私の親は、私の言うことをわかろうとせず、自分の言いたいことだけを言う。」「私の親は、言いたいことがあるけれどだまって言わない。」「私の親は、言いたいことはきちんと言う。そして私の言っていることも、よく聞いてくれる。」など…。
 親は、子どものおもいがわかってくると、それまで理解できなかった気持ちや行動が見えてきます。
 子どものこころに、よりよい言葉を根づかせるためには、日頃からの親子のコミュニケーションをとおしての信頼関係が基盤です。

 子どもは、日々、成長していきます。
 その発達過程にそいながら、多様な悩みや不安にぶつかります。
 それらの気持ちを受容し、共感しながら、子どものこころに生きて働く言葉をなげかけられる親にならなければなりません。
 そのためにも、親自身が自らを育てることを忘れてはなりません。
 「子育ては、親育ち」と言われているゆえんです。

 

~家庭教育のあり方について-子どもを伸ばす親のかかわり方-~第2回 子どもたちは自信がないと言っています。その心が見えますか…

平成20年6月4日

 今の子どもたちの良いところは、のびのびとして明るく自己主張もでき、積極的に行動します。また、物があふれ、自分の欲しいものは、お金を出せば手に入る便利な生活であります。
 しかし、このような環境の中で、子どもたちの心は、「自信が持てなくて、イライラしたり不安な気もちだ」と、言います。
 なぜ、自信がなく、イライラしたり不安な気もちなのでしょうか…。
 10歳から12歳の子どもを持つ親の国際比較調査で「子どもの成長に満足していますか」の問いがありました。「満足している」と回答した親の割合が、欧米では80%、日本は36%であります。
 日本の子どもがそんなに悪いとは思えません。

 このような差は、日本の親が子どもに何を期待するのかというところが違うのでは…。
 それも、学校の成績のみに関心が向けられ、ほかの子どもとの比較に目を奪われています。
 親の期待に応えていないというおもいが、子どもたちの心に深いかげを落としては、いないでしょうか。

 小学4年生の子どもの悩みです。「先生、百点とるにはどうしたらよいですか?」と…。家では、お兄ちゃんが、いつも百点をとっています。お母さんから「あんたは、いつも成績が悪くてだめね」と、言われています。
 「百点を取らないと僕は、お母さんから愛されない」と思っているのです。
 親が試験の点数にこだわり、兄弟と比較され傷つけられる言葉にイライラしています。

 子どもの自尊心や自信は、自分の存在を親からありのまま受け入れられ、認められる肯定された体験から培われていきます。
 子どもは、『自分は親から愛されている』『自分は親の前で自分らしくあっていい』と思えることが、何より大事であります。
 心の底から、子どもの存在そのものを大切に思うこと…。
 それが、子どもにどのように伝わっているかを、振り返って考えてみる必要があります。自分の心がわかってくれる親を、子どもは尊敬し、信頼します。
 それを糧として、自信を持って目を輝かせ、いきいきと、よりよい人生を生きていくことでしょう。

~家庭教育のあり方について-子どもを伸ばす親のかかわり方-~第1回 親から指示されないで行動する知恵を…

平成20年5月15日

 子どもが学校に出かけるまでに母親が言っている言葉は、「早くしなさい」が一番多いとのことです。
 毎朝、家を出るまでの短かい時間に、「早くしなさい」と、何度言っても子どもは、機敏に行動しません。
 業を煮やした母親は、「早く着がえなさい」「早くご飯を食べなさい」「早く歯をみがいて」などと、「早く、早く」の指示が飛びかいます。
 こうなると、子どもは、お母さんの言われるとおりの行動をすればよいという考えを持つようになります。自分では、何も出来ない指示まち人間になってしまいます。
 だんだん大きくなると、命令に抵抗し、反抗するようになります。

 そうならないために、親子で知恵を出し合って話し合うことが大切です。
 朝の短かい時間について、見通しを立てて、それを実行するにはどうしたらよいかと…。
 母親は、子どもがどのような知恵を出すか楽しみながら考えを待つことです。
 しかし、「わからん」と言って頭を働かせようとしない時には、叱ってはいけません。
 ここが、母親の知恵を発揮するところです。選択肢を出してあげてはどうでしょうか。
 例えば、目標時間に合わせるために時間を決めて行動する。また、早く準備が出来るように朝の計画表を作るなど、自分の行動を自分で決めてやらせるように仕向ける案です。

 そして、いったん子どもが自分で決めたことは、口をはさまず、子どもの自主性にまかせましょう。
 少し、時間がずれてもさりげなく見まもってあげることです。
 うまくいったら、「よくできたね」と、讃めてあげると、子どもは達成感を味わい、自発的に行動する力がつき、自信を持ちます。
 子どもを育てることは、自立へ向って知恵を出しあい、一歩一歩段階を追って発達させていくことです。