秋葉 祐三子 インストラクター

親の責任、子どもの責任

平成26年3月25日

親の責任=まず子どもたちの手元にあるもの、周りにあるものをよく知ること
子どもの責任=何か変だな?と思ったら、すぐ信頼できる大人に相談すること

 ネットの世界は目に見えません。「子どもたちが何をしているのか全くわからない!?」というときは、とにかく子どもたちの話をしっかり聞いてみてください。彼らは、ゲーム機、学習用端末、図書館や留守の友達のうちのパソコンなど、身の回りのあらゆるところから、ネットに入り込んでいます。本人は、自分のしていることが理解できていないことも多いのです。インターネットは、よくも悪くも子どもたちの未来につながっています。

 公園でゲーム機に群がってうずくまっている子どもたちを見ると、本当にもったいなくて悲しくなります。
 LINEにはまって朝起きられない小学生。誰の責任でしょう?
 同じ理由で退学する高校生もいます。高校生となると自己責任?
 小学1年生の子どもが、パズドラ(スマホゲーム:パズル&ドラゴンズ)で知らない大人と知り合ってしまう。そんなことを親が望んでいるでしょうか?
 軽い気持ちで書き込んだ文字が、未来永劫ネット上に残ります。写真を含めた情報は、二度と回収できません。これは、送った子どもの責任?
 インターネットの世界では、法的責任は、子どもであっても大人と同等に問われ、最終的には保護者が責任を負わなければなりません。
 子どもに何かを与えるのなら、どんなものなのかを、利点、欠点ともに理解すべきです。わからないまま与えるのは、無責任です。

    子どもとメディアの見解:
    スマホは高校生でも危険。インターネットも同様。  
    ゲームは10才以降=現実と空想の区別がつくようになってから
    全て約束とフィルタリングは必須
 
 スマホもネットもゲームも「絶対だめ!」ではありません。親が子どもを守るために、必要な知識を持ち、子どもたちが約束を自分でつくり、守ることができるように成長する過程を、安全に適切に見守ることができるなら、必要に応じて利用していくことも、選択肢の一つです。
 安全・適切な見守りに使用時間制限とフィルタリングは必須です。

 親子で一緒にお友達同士で、真剣に話す機会を持ってみませんか?
 真剣に話す親同士の姿を、子どもたちに見せてください。
 そのときのポイントは、「うちはうち、よそはよそ」。
 親同士が、「みんなと同じが安心」に流されることなく、お互いの考えを尊重し合いながらしっかり話し合いをすること。
 
「親の安心」=「子どもの安全」ではありません。
 親は子どもたちのモデルになりましょう。

 

ネット機器のセキュリティについて
 
 セキュリティについて最後にお願いがあります。
 今使用しているインターネット接続可能な端末(ゲーム機、iPod touch、学習用端末、タブレット、スマホやパソコン等)に、必ずパスワードでロックをかけてください。
 Wi-Fi対応のフィルタリングで時間制限、利用機能制限ができるものをかけてください。
 現在のインターネットの情報発信力はとても強力で、「子どもが遊びで触った」でも大きなトラブルに発展しかねません。家族を守る最低限の設定と考えましょう。

大人は知らない ~ネットの中の子どもたち 早期接触と依存の危険

平成26年2月12日

 最近、子どもとメディアのことで、親御さんの悩みをよく耳にします。

  「子どもに、『仲間はずれにされる。』と泣きながら懇願されて、ゲームやスマホを買い与えてしまったけれど‥食事中も手放さない、夜も寝ない、親の話には聞く耳を持たない、毎日ゲームやスマホのことで親子で言い争いが絶えない。いったいどうするべきだったのか。」と。
 また、思わぬもめごとで学校からの呼び出しがあったり、困り果てて学校に相談に行ったりするケースも大変多いようです。
 しかし、もっと怖いのは、対人関係能力を磨いていかなければならない思春期以降(個人差もありますが、小学校5、6年生頃から)に、メディア接触が過剰になることで、顔を突き合わせた本当の人付き合いの体験が不足してしまうということです。
 多くの若者が「対人コミュニケーション」に苦手意識を持っていると言われます。具体的には、多くの高校生、大学生が、家庭や職場などの固定電話でかけるのも、受けるのも苦手です。就職活動の際、ネット経由でエントリーはうまくいっても、最終的な就職担当者との電話でのやり取りがまともにできない、(アポイントさえ満足にとれず、挨拶もできない)大学生が多いようです。

 では、そうならないために、今、どうしたらいいのでしょうか? 
「(ゲームやスマホが)ほしい!」と、子どもたちから要求がでてきた時こそがチャンスです。お互い時間をかけてしっかり話し合いをし、自分や友達を大切にするためには、どのように使用するべきなのか、与える前にまずルールをきちんと決めておきましょう。そして、使用し始めた後も、実際の使用状況について、常に親子で話し合い、一緒に考えルールを見直しながら、じっくり親子でつきあっていくことが大切です。

ここで、先月予告していた、子どもとメディア おすすめルールを紹介します。
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〔小学生のゲーム機編〕
 ☆ ゲーム機は保護者のもの。使うときだけ、時間を決めて借りるようにする。
 ☆ ゲーム機は、家の外に持っていかない。
 ☆ 夜は寝ます。(夜9時以降はスイッチオフ)
 ☆ ゲームは 一週間に一回だけ 2時間以内。
   (あるいは、ゲームしない日を、一週間に3日以上。)
 ☆ ゲームした分だけ、体にいいことをする (友達と外で体を動かして遊ぶ、
   など)
 ☆ テレビ、ビデオ、ゲーム、ネット、ケータイ、スマホ、パソコン、・・・(電子
   メディア)全部あわせて一日2時間まで
   (テレビは、見ていなくてもテレビのついている部屋にいる時間も全部数え
   る。)
 ☆ ゲーム機をネットに接続しない。
 ☆ どうしても時間が守れないときのばつを決めておく。まず、一ヶ月以上
使用禁止。(依存防止)

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 ルールにはいくつかのポイントがあります。
まず
 1)子ども自身がルールを提案できるようになってから、話し合いをして持たせる。
ルールの意味が分からない場合、幼すぎて時間の概念がはっきり していないなど、ルールそのものが守れないうちは、まだ早いでしょう。

 2)ゲーム適齢期は現実と仮想の区別がきちんとつくようになった時。
現実と仮想が曖昧なうちは、現実認識が歪む可能性があり危険です。
3D映像なども不適切です。

 3)最初は守りやすい約束から決めて自信をつけていくとよい。
まもれそうもない約束はしません。

一番のおすすめは、なるべく幼いうちからメディアコントロールの練習(子ども自身が自分でテレビのスイッチをオフにする力をつけること)をすること。
依存予防、依存回復力向上に役立ちます。

子どもは自由にネットを使っちゃだめ?どんなルールなら大丈夫?

平成25年12月13日

4年生になると環境について調べる宿題が出て、ネットで調べてもいいんだけど、「図書館に行って本で調べなさい。」ってうちのお母さんはパソコンを使わせてくれない。友達はママがすぐスマホをかしてくれるのに・・・。
図書館のパソコンは、子どもも使えるから検索してみたら、宿題のことを調べたいのに変なのが出てきて怖かったこともあるし、きりがなくって延々見ちゃうこともあるよ。
お母さんは、「パソコンもスマホも勝手に一人で使っちゃだめ。」っていう。でも、おじいちゃんちに行けばパソコンもスマホも、ネットゲームもやりたいだけやらしてくれる。パソコンは1年生から学校で習うし、3年生で検索の仕方も勉強したよ。僕でも使い方は大体わかる。友達のうちに行けば、家のパソコンを自由に使える所がほとんどだし、塾の先生の大学生も頼めばすぐスマホ貸してくれる。
テレビはよく見るよ。朝起きたら時間がわかるようにテレビがついてる。僕が見たい番組は大体見られる。お父さんは帰りが遅いし、お母さんは見たい番組は全部録画してる。テレビは一日中ついてるんだけど、家族で同じテレビ番組見るってことは少ないね。YouTubeなら古い番組でも見たいときにいつでも見られるし。
友達とはテレビの話かゲームの話がほとんどかな。


50年前、テレビや電話はまだ一般家庭には普及していませんでした。私が子どもの頃、我が家には白黒テレビはありましたが、電話はありませんでした。高価な新しい家電製品が、右肩上がりの時代の波にのり、どんどん家庭に普及していきました。
かつては社長さんしか持っていなかった携帯電話を誰もが持ち、車と同じ値段だったパソコンがみるみる安価になり、インターネットの普及とともに、一般家庭に普及しました。今やパソコンよりもパワーのあるスマートフォンを子どもたちが持っています。ゲーム機は一家に数台以上、これもネットに接続できます。
今の子どもたちは、30年前とはまったく違うメディア(ネットやゲーム機などの電子メディア)環境で育っています。子どもたちのゲーム初接触年齢は年々下がって来ており、今の小学校5、6年生では3−4歳ぐらいから始めた子がほとんどです。子どもの通信教育の教材は、ビデオやCDに変わり、ゲーム機やタブレット、パソコンでネット接続しての指導が主流になってきています。赤ちゃんは、スマートフォンやタブレットをガラガラの代わり、絵本の代わりにあたえられており(※ベビーアプリを利用)、今後の心身の発達について大変危惧されています。
世界中の誰もが、24時間自由に情報発信できるインターネットの世界。果たして親の目の届かない所で、子どもたちが自由に振る舞っても安全な場所でしょうか?実際の五感で楽しむおもちゃが、ゲーム機やネットなど実体のない仮想のものに入れ替わっていきます。子どもたちの遊びがメディアに奪われています。
日本の子どもの電子映像メディア接触時間は世界でダントツ1位。世界一早い段階から接触しています。(IEAの国際調査【2003、2007】)子どもが夜更かしで睡眠時間が少ないのも特徴的です。
そして日本は、世界一「自分は孤独だ」と感じる子どもの割合の多い国です。(ユニセフ調査2007)子どもの自殺も少なくありません。
人間の子どもは(特に幼いうちは)、生身の人とのやり取りや、実際に自分の身体を使った感覚からのみ経験を積み、世界観を構築すると言われています。脳の働きや育ちについての最新の知見からは、多くのことがわかってきています。
小児科医会は、新たな提言を準備中だそうです。


前回の宿題です。
「テレビ・ビデオ・ケータイ・ネット 一日何時間までOK?」

一つの参考として、ご紹介します。
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「子どもとメディア」の問題に対する提言
1.2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう。
2.授乳中、食事中のテレビ・ビデオの視聴は止めましょう。
3.すべてのメディアへ接触する総時間を制限することが重要です。
1日2時間までを目安と考えます。テレビゲームは1日30分までを目安と考えます。
4.子ども部屋には、テレビ、ビデオ、パーソナルコンピューターを置かないようにしましょう。
5.保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールを作りましょう。

社団法人 日本小児科医会 「子どもとメディア」対策委員会

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ご飯のときに、テレビを消してみたら、どんな変化がありましたか?
香りや食感、味覚などあらゆる五感と会話がすぐにもどってきませんでしたか?
子どものことは、子どもに聞くのが一番です。お子さんに、テレビやゲーム、ケータイの話を聞いてみてましたか?
どんな話をしてくれましたか?驚くほどいろんな話が出てきませんでしたか?
大人は、ちょっとびっくりするような話題でも、さえぎらず、指導せず、我慢して、子どもの話を最後まで聞くようにします。
子どもの発言より、大人の発言が多いなら、子どもの話を聞いていることにはなりません。
まずは、親子で総メディア接触時間の「実際に守れるルール」を作ってみましょう。
お子さんの生活を振返り、現状を正確に把握します。何に、どのぐらい、いつ、どんな状態(状況、場所、時間帯、他)で接触しているでしょうか。
厳しすぎる守れないルールでは意味がありません。今より少しだけがんばれば達成できる様なルールにします。
ルールは子ども自身が作ります。自分の時間、自分の生活、自分の未来だからです。
ルールを決めるとき、大人は根気よく話を聞き、その上で大人として、親としての意見や感想は述べても構いません。
「あなたのことが大切なので、親として私はこう思う」ということを伝えてください。
他にもこんなことを決めておいた方がいい、ということも出てくるかもしれません。例えば、夜10時以降は使わない、ゲーム機を家の外へ持っていかない、など。どんなものがルールに入っているといいでしょうか?
親子で考えてみてください。


子どもたちが求めているのは、人とのつながり。実際に目の前にいる人との生の関わりです。
とにかく親子の対話が、子どもたちを見守り、健やかに育みます。
ネットを介さない生身の親子の対話と、できれば共有の体験をたくさん持つこと。
お子さんが手元にいる、今がチャンスです。


次回、子どもとメディアおすすめのルールをいくつかご紹介します。

テレビ・ビデオ・ケータイ・ネット 一日何時間までOK?

平成25年11月27日 

今日は塾が無いから、学校から帰ったら、自転車のかごにゲーム機を入れて急いで公園に乗り付ける。この前、友達のゲームソフトがなくなったりしたから、お母さんは「家の外にゲーム機を持っていっちゃだめ。」って言うけど、気付かれないし、だいたい持っていく。自分で持っていかなくても、友達の分までゲーム機を持ってくる子もいるから、みんなでやる。他の子がゲームする画面を一緒に眺めたり、ゲーム機を借りてやってみたりもする。チームで戦っている友達は、毎日必死で集まってゲームを進めている。一人欠けたら進まないから、絶対集まって来る。
 雨の日は近所の守衛さんのいないマンションのエントランスホールでみんなで陣取って、ゲーム対戦。
 マリオカートもポケモンもネット対戦する。マックでやって、ゲームのアイテムをゲットしたり、ポテトをもらったり。友達は、モンハン(モンスターハンター)にはまってる。モンハンは、CEROのレーティングでは15歳以上だけど、小学生も、もっと小さい子も、中学生も大人もみんなやってる。
 すごい長い時間やってる子たちもいる。12時間とか、24時間とか。僕はそんなに長い時間やってるワケじゃないし、友達で眼科に通ってる子、けっこういる。いまのところ僕は視力はいいし、気にしてない。
 このごろ僕のゲーム機に知らない人からメールが来るようになった。Wi-Fiでつながった人かな?お母さんにネット接続はオフにするっていわれたけど、友達に接続のしかた教えてもらったからいいや。

 このごろの小学3、4年生。例えばこんな感じです。本当なら、おもちゃなどなにもなくても友達と一緒に元気に遊ぶギャングエイジの小学3、4年生。むしろ何もない方が、仲間同士でずっと豊かな遊びが展開される年頃です。

 親の皆さんが、子どもの頃、どんな遊びに夢中でしたか?どんなおもちゃが好きでしたか?
 自分自身がお子さんと同じ年頃だった頃、友達とどこでどんな風に遊んでいましたか?
お子さんの年頃だったころ、日常生活の中でラジオやテレビやゲームなどのメディア機器とどんな風につきあっていましたか?ケータイも、もちろんパソコンもネットもスマホもありませんでしたね。

 ほぼ一日中親の手元にいた乳幼児期とは異なり、小学生ともなるとみるみるうちに行動範囲が広がり、遊びも変化していきます。
 今現在のお子さんの現実の友達関係、いつどこで、どんな友達と何をして遊んでいますか?
 そもそも、遊ぶ時間=自由な時間はたっぷりありますか?
 すでに子どもの生活の中に深く入り込んでいる電子メディア、ネットやゲームの世界で、いつどこでどんな仲間と何をしているか、ご存知ですか?


 子どもたちの体力が落ちていると言われて久しいです。走り幅跳びは、うまく踏み切れないので、立ち幅跳びを計測するようになりました。背筋力の計測は、子どもが腰を痛めたり骨折したりするので、計測そのものがなくなりました。

 昨年度の調査では、(平成24年度 北九州市子ども家庭局青少年課が北九州市内10児童館で実技調査)

 「箸を正しく持てる子ども」は全体の15%、
 「一見正しい持ち方をしているが、指使いがおかしい」25%、
 「独自の持ち方をして使う」が60%。
 「鉛筆を正しく持って使える子ども」15%。
 「ただしくナイフで鉛筆を削ることができる子ども」は0%。

同じ一連の調査の中で、やったことのある遊びと、やってみたい遊びについて尋ねています。

 「たき火をしたことがない」55%のうち、「たき火をしてみたい」子どもは43%
 「キャンプをしたことがない」42%のうち、「キャンプをしてみたい」子どもは36%

 子どもたちは、なんだってしてみたい。興味津々です。やればなんでもできるようになります。

 「メディア」=「媒体」、そしてメディア上に存在する「情報」=「置き換えられたもの」です
 子どもたちには、本物、生身の五感をフルに使って感知する経験こそが必要です。

 メディア環境に限らず子どもの環境の全ての安全と健康の基本は、「子どもたちに大人が関心を持つこと」です。昔も今も変わりません。


 さて、冒頭の「テレビ・ビデオ・ケータイ・ネット 一日何時間までOK?」の問いの答えは次回にもちこしましょう。みなさんも考えてみてください。理想的には?また、我が家の現実において実現可能なのは?そして、ご家庭で実現可能な簡単な方法で、テレビやゲームの時間を減らす工夫をしてみてください。

 とても簡単で効果の高い 一つの方法をご紹介します。「ご飯のときは、テレビを消す」
『ご飯のときにテレビを消すと、家族の愛着が増す』ことが、私たち子どもとメディアの調査でわかっています。
 今日から早速、チャレンジしてみてください。ご飯の味が変わり、お箸の持ち方が変わり、親子の会話が変わります。親子の会話が、(友達や他人との会話よりも)子どもの前頭葉を活性化するという研究結果(※1)も出て来ています。
 一ヶ月後、どんな変化が起こっているでしょう?

 ではその一ヶ月後の変化を楽しみに、またお会いしましょう。

※1・・・第1回子どもメディア全国フォーラム報告集 特別講演 川島隆太
     「脳を知る・脳を育む」~子どもの発達とメディア環境~より引用