高澤 信也 先生

4.子どもが噛む・叩く理由その②「不安」への対処

令和4年11月25日

乳幼児の噛む・叩くといった行動は不安を感じているときにも起こります。

不安は「怖い」の仲間ですから、抱えておくのがとてもしんどい感情です。
だけどそれを言葉で伝えられない。
だから代わりに行動で伝えようと頑張っているんです。

でも不思議じゃないですか?
不安は本来、未来を否定的に予測したときに湧いてくる感情。
乳幼児が未来を憂いている…なんて考えにくいですよね。
ではどんなときに不安を感じているのでしょう?

それはズバリ!親(特に母親)が不安を感じているとき。
お母さんの表情、態度、体温、言葉のトーンなど、言語以外のさまざまな情報を通して子どもは不安を感じ取ります。

本来子どもにとって母親は安心・安全を提供してくれる「安全基地」。
その安全基地が不安を感じていれば、子どもも不安を感じるのは実は自然なことなんです。

ではどうすればいい?
もうお分かりですね。お母さん自身が安心・安全を感じる材料を徹底的に増やすのが一番の近道です。

☆仲間や味方を増やす
☆信頼できる人に話を聴いてもらう
☆もらえるサポートは遠慮なくもらう
☆自分だけの時間・空間をもつ工夫をする
などなど

いろんな資源を使ってお母さんの中に安心・安全が増えれば、今度はそれが表情、態度、体温、言葉のトーンなどを通じて子どもに伝わります。
すると子どもも安心・安全。不安は軽くなり、それを伝える行動も自然と減っていきます。
お母さん自身に安心・安全をたくさん増やしてくださいね。
その先に楽しい親子の時間が待ってますから。

3.子どもが噛む・叩く理由その①「不満」への対処

令和4年10月17日

前回の記事では、子どもの心の中に「不満」や「不安」という感情があって、それを表現するための方法のひとつが「噛む」「叩く」であることをお伝えしました。

今回はまず「不満」にどう対処すればいいかをお届けします。

子どもが不満を感じているときには必ず「満たしたい欲求」があります。それが満たされると心は落ち着くようにできています。(大人も一緒ですね)

ですがその前にまずは共感!「いやなんだね~」と気持ちを受け取ってあげることがとても大切です。あなたのお子さんが自分の意思や気持ちを言葉で伝えられる年齢なら、「何が嫌だったの?」「どうしたかったかな?」と聞いてあげてもいいですね。

わが子の「望み」がわかったら、次は「それは自分で満たせる?満たせない?」を見分けたいところです。

ちょっと頑張れば自力で満たせる欲求なら、お子さんが自分でそれを満たせるよう応援してあげるだけで十分です。肩代わりは無用ですよ。

一方で、お子さんが自力では満たせない欲求なら、親子で協力して満たしていけたらいいですね。

そうすれば「不満」が「満」に変わり、お子さんは落ち着きを取り戻してくれます。

「噛む」「叩く」は子どもが欲求を伝えてくれる大切なメッセージ。その行動を正そうとするよりも、その手前にある「欲求」を一緒に探してあげてくださいね。

いよいよ次回は最終回。もう一つの原因である「不安」への対処をお届けします。

2.子どもが「噛む」ほんとうの理由

令和4年9月15日

今回は幼児期(1歳〜就学前)の「噛む」「叩く」について一緒に考えていきましょう。

子どもが何かしらの感情を感じ、それを自分でなだめきれないとき、それを親に伝えようと試みます。それをうまく伝えられないとき、「噛む」「叩く」といった行動で伝えようとすることがあるんです。

なだめきれない感情とは何かと言うと、大半が『不満(イライラ)』と『不安』です。

まずは不満。

これは自分や周りが思う通りにならないときに湧いてくる感情です。「○○したいのに、うまくできない」「○○してほしいのに、やってくれない」。不満は子どもの成長には必要ですが、それを伝える行動が「噛む」「叩く」になるから親は困ってしまうわけです。

次に不安。

不安は「怖い」の仲間です。怖い気持ちを言葉でうまく伝えきれず、「噛む」「叩く」という行動で伝えようとするわけです。したがって、これは子どもなりの“切ない努力“。そこを理解してあげることは、とても大切だと思います。

不安に関しては、もう一つ大切なことがあります。子どもが最も不安を感じるのはいつだと思いますか?それは、母親自身が不安なとき。

母親の不安は
・表情
・声のトーン
・脈拍や体温の上昇
・身体の緊張
などを通して子どもに伝わります。これは相手が乳児であっても伝わるのです。

そして、その不安はそのまま子どもに“伝染“します。実は親が不安だと子どももセットで不安になってしまうのです。それをなだめたくて子どもは「噛む」「叩く」を選ぶことがあるのです。

「じゃあ具体的にどう対処すればいいの?」

それは次回お届けします。

1.「うちの子の噛み癖、大丈夫でしょうか?」

令和4年8月31日

「子どもがしょっちゅう噛んできます」
「叩いてくることもあります」
「言ってもやめないから困っています」

乳幼児期の子育てでは、よくある悩みの一つではないでしょうか。

親の自分だけならまだしも、噛んだり叩いたりする相手が親以外、たとえば友だち、先生なんてところにまで広がるとそのままにはしておけませんよね。

そこで「どうやったら解決できる?」を考えたいところですが、その前にちょっとだけ乳児期の「噛む」についてお話させてください。
乳児期(~1歳)の赤ちゃんは何でもかんでも口に入れる、噛むなんて日常茶飯事です。
この時期の子どもには「口唇欲求」というものがあって、唇を通じて快感情を得たいんです。
また、なんでも口に入れたり噛んだりして「外界を確認」しています。そうやって世界とつながって安心感を得ているんです。

ママのおっぱいを吸う、おしゃぶりやおもちゃをあむあむする、テーブルの端っこをガシガシかじる、とうちゃんの鼻をがぶっと噛む。こういった行為を通じて口唇欲求を満たしたり、世界とつながって安心感を得たりしているのです。

したがってこの頃の「噛む」という行為は発達的にはとても大切。決してダメなことでも悪いことでもありませんから安心してくださいね。

「そうか~、この子は今、口を通して自分を満たしてるんだな~」「口でいろんなもの確認して安心も得てるんだな~」「成長の証なんだな~」とにこやかに見ていれば十分ですよ。

では次回、幼児期の「噛む」「叩く」について一緒に考えていきましょう。