2 子どもの主体性

令和2年1月20日

 夏休みのある日のこと。子どもたちがにぎやかに話す声が、公民館に響いていました。
「ハワイに行きたい!」
「いや、USJがいい!」
「お金持ちの気分になりたい(?)」

 そこにいたのは、小学1年生から6年生までの20数名。みんな好き放題に言っています。
―――実はこれは、ある子ども会の「企画会議」の様子。夏休みにみんなで何をするかを話し合っていたのです。

 もともとは、子ども会から「子どもたちが喜ぶおもしろいことをしてほしい」という依頼をいただいたのがきっかけ。子どもたちにとって「おもしろいこと」って何だろうと思いながら、ふと、それを大人が考えるのではなく、子どもたち自身が「したいことを考え、自分たちで実現する」ことが何よりもおもしろいのではないか、そう考えて第1回目の企画会議に至ったのです。

 会議は、まず、自由に自分の意見を出し合うことからスタートです。唯一のルールは、大人も子どもも、他の人の意見を否定しないこと。ひとしきり盛り上がった後は、「みんなが楽しめるもの」や「参加費は〇円以内で」などの条件を加えて候補を選んでいく。そして最後に必要な準備や役割分担など具体的なことを決めます。

 こうした取り組みでは、周囲の大人の支援のあり方がとても大切です。最近は、こういう形でのプログラムを提案させていただくことも多くなりましたが、最も印象的だったのは、「公民館に泊まる」というプログラムでのできごと。子どもたちの間では「夜は、銭湯に歩いて行く」ということで意見がまとまったのですが、公民館から銭湯までは、歩くと30分以上。当然のことながら、大人からすると安全面が心配です。銭湯まで車で送り迎えをすることも含めて、大人の間でも話し合いました。そして、最終的には「やはり子どものしたいことを支えよう」ということになり、子どもたちの企画がそのまま実現しました。普段だったら「まだ~?」「きつい」など言っていそうな長い距離を文句ひとつ言わず歩き、銭湯へ入った、その時の満足そうな表情は忘れられません。

 自分で考えて、決めて、行動する。それは、子どもたちが、これからの変化の激しい時代を生きていくために、ますます必要になっています。安全面や様々な大人の事情もありますから、子どもたちの言葉に耳を傾け、あまり口を挟まずに見守るというのは、なかなか難しいことです。ですが、子どもの主体性は、子どもが「お客さん」の立場である限り、育むことはできません。

 では、どうすればよいのでしょうか?例えば晩ごはん。ちょっと時間と心に余裕のある日には、子どもといっしょにメニューを考え、いっしょに買い物に行って、いっしょに料理してみるのもひとつです。子どもにどのくらいしてもらうかは、子どもの興味や経験、家庭によっても変わってくると思いますが、ポイントは子どもが「自分で作った」と思えること。その達成感が次の挑戦につながる力になっていくのです。

 ちなみに「いっしょにご飯を作る」は、別の効果もあります。子どもたちは、自分で作ったものはおいしいようで、ちょっとくらい苦手な食材でも、自分で作った時にはちゃんと食べてくれます。うちの次男(5歳)は、ピーマンが苦手。次の休みの日に、いっしょに料理をしようと誘ってみようと思っています。

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