~生活体験を豊かに~第3回 働く体験を通して、耐性・がまんする力を育てる

平成19年1月5日

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 今の子ども達が体験していないこと、それも大変に欠けている体験は、「働く」「生産する」という体験です。それも、汚れることを厭わず(いとわず)に働くことは、ほとんど体験していないといってよいでしょう。その反対に、子ども達が物心ついた頃から山ほど体験してきたことは、「使う」「消費する」という体験です。それも、AよりB、 B よりCという具合に選んで使うという体験を、幼い頃から過剰に体験しています。

 現在は、生活が便利になった分だけ、大人も子どもも、「便利な物」に頼り、気づかぬうちに他者依存の心を強くしています。かつては、子どもにも厳しく求められてきた「子どもなりに働く」体験の場が、日常生活の場面から失われてしまいました。その分、がまんする力が弱まっているといえます。

 「働く体験」は、忍耐を学ぶに最適です。仕事は、決められた手順を守り、完了するまで止めてはならない、「がまん」を強いられます。すなわち、耐性を育てます。現在の家庭や地域でも、子どもの働く体験の機会はあります。例えば、遠足は弁当作りの演習の機会です。修学旅行は衣類や生活用具の収納訓練の、またとない機会です。雨降りの日は、傘をさして登校・下校する訓練の機会です。ある幼稚園では少し風が吹くと傘をさしてまっすぐ歩けない園児が少なくないことに気づいて、先生方が驚いたという話もあります。登下校の際の車での送迎は、子どもの歩く訓練の機会を奪ってしまうだけでなく、登下校時の友達付き合いをも無くしてしまうという、失うものの大きさも考えてみたいものです。

 夏休み・冬休みは、子どもに料理やお掃除の仕方を教えて、家庭内での実力をつける絶好の機会です。困難に打ち勝つ力こそ、子どもにつけてやりたい力です。

 

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