平成18年3月1日
私がかつて、トルコの大都市イスタンブールやアンタルヤで小学校の4・5年生を対象に行った調査によると、94・3%の子が先生を「とても」尊敬していると答えていました。因みに私の大学院の教え子、李仲濱さんが中国と日本の小学6年生の実態を調査し、比較した結果では「とても」「まあまあ」を合わせて中国96.2%に対して、日本は52.9%でした。教育社会学者の深谷昌志氏が米国、中国、ニュージーランド、ブラジルなど6か国の子どもの教師に対する尊敬意識の実態を比較した結果でも日本の子ども達は最も低い割合を示しています。こうした傾向はお父さんやお母さんに対しても同様です。
先生や親を尊敬していなければ、言うことを素直にきく子にはなりません。実際、日本青少年研究所の調査によると、米国や中国の高校生は「親に反抗すること」は「してはならないこと」だと80%以上が答えています。しかし、日本の高校生ではそれは15%程度で、「本人の自由」だという答えが85%を占めています。
最近は、学級崩壊とまでは言えなくても、「一年生プロブレム」という言葉が出てきているように、低学年から授業中の私語や立ち歩きなど、勝手な行動をする子は珍しくありません。この背景には大きな原因の一つとして、尊敬の心の未発達が考えられます。親や教師を尊敬することができれば、子どもはその教えを受け入れ、学ぶことができます。自分を律し、高めることができます。親や教師との関係は友達的であるのが良いと言う人がいますが、それは違います。ふだん友達のように接している親や教師が、子どもが悪いことをした時、注意して子どもは素直にきくものでしょうか。むしろ強く反発するでしょう。育てる者、育てられる者では本質的に立場が違うのです。
尊敬の心は年齢とともに自然に身につくものではありません。日頃から、ものごとを教えてくれる人、自分を育ててくれる人、例えば年長者や先生を敬うことを親自身が態度で示すことです。また、両親がお互いに尊敬している姿を見せることも大切です。折りにふれ年長者や先生、親に対する口のきき方や態度についてきちんと教えることが大事なのは言うまでもありません。