第4回 テレビ番組やゲームソフトの内容の問題

平成18年8月1日

■「暴力的なテレビ番組を見る子どもは、暴力的な大人に育つ傾向がある」?

カール・セーガンという研究者は、その著書の中でこう述べています。
   暴力的なテレビ番組を見る子どもは暴力的な大人に育つ傾向がある」と言う意見がある。しかし、テレビ番組が暴力を引き起こしているのだろうか、それとも暴力的な子どもが暴力的な番組を好むのだろうか?

 この点に関しては、現在でも意見が分かれています。よく、子どもが暴力的な事件を引き起こすと、すぐテレビやテレビゲームとの関連を疑われますが、科学的には、この因果関係は認められているとはいえません。
 
 しかし…
   土曜の朝の子ども番組には、平均して1時間に25回の暴力シーンがあるのだ(米国の事例)。どんなに影響を少なく見積もっても、これだけの暴力シーンを見せれば、攻撃性や無差別な残虐行為に対する幼い子どもたちの感性はすり減ってしまうだろう。おとなのなかでも感受性の強い人は、虚偽の記憶を脳に埋め込まれることがあるのだ。だとすれば、小学校に上がる前に十万回もの暴力シーンにさらされた子どもたちは、何を心に埋め込まれるだろうか。

 ここで「暴力」というと、何か残虐なものだと考えてしまいがちですが、「ポケモン」を見た後でも、子どもたちのケンカが多くなったということが報告されています。ですから、おとなは「暴力」とは思っていなくても、子どもたちにとっては「暴力」的シーンとして影響する可能性があります。
 
 また、テレビが悪いというのは科学的ではないと言う声もよく聞かれます。少なくとも、私たち親の世代も、ずいぶんテレビを見てきました。しかし、私たち親の世代が育った環境と今とを比べると、子育て・子育ちの環境は悪化してきていいます。「四間」の喪失という言葉があります。遊ぶ「時間」がなくなっている、「空間(遊び場)」がなくなっている、「仲間(子どもたち)」がいなくなっている、そして、「間」、いわゆるゆとりがなくなっている。このように、子どもたちは実体験をする場を失っているので、テレビ・ビデオ・テレビゲームなどの仮想空間と現実空間とを明確に区別することができにくくなってしまっていると考えられ、だからこそ「質」が大きく影響するのではないでしょうか。
 
 先ほどの「ポケモン」をみせた子どもたちが、科学番組である「サンゴの産卵」のシーンをみせたあとは、たのしそうな遊びを展開したそうです。ですから、何をみせるかというのは本当に大切な問題です。

 

< 前の記事     一覧へ     後の記事 >