平成19年9月4日
園生活におけるいざこざ・けんかは、人とかかわる力を身につけていく大事な経験です。
7月のある日、幼稚園でお弁当の時Y男とF男が好きなR男の横に座って食べたいということで、席の取り合いが起こりました。「僕が座る所にF君が坐っとう」とY男、「誰もおらんかったから僕が座ったと」とF男、「でも僕が早かった」とY男が主張し続けます。それを見ていた周りの子たちが「交代したらいい」というと、「7(時計の針が)になったら交代しよう。だって半分ずつやもん」と、お弁当の時間を半分にしその日のうちに交代というY男、「今日は僕で、明日がY男君」と一日交代というF男と、再びそれぞれの思いを主張しはじめ、解決の方向を見出すことは容易ではありませんでした。なかなか解決できないのでY男が急に実力行使に出始め「7やん、7になったら交代」と割り込みました。F男も負けていません。「そしたら、絶対にこの場所には座らせん。ずーとね」と、二人の言葉のやり取りが激しくなりました。そこで保育者が「先にY男君が取っていたのね。F男くんは誰もいないので座っていたのね」と、それぞれの主張を双方に分かるように伝え問題を確認していきました。するとF男が「いいたい、7で交代してやる」と急に譲歩し始めました。Y男は気持ちの整理がつかないのか「チッチキチ・・」と奇妙な動作をしながら部屋から出ていってしまいました。少ししてY男が気持ちを落ち着かせ戻ってくると、F男が「いい、今すぐ変わってやる」と全面的にY男に譲ると「ありがとう」と自分から素直に言葉で気持ちを表現できました。
大人が先回りをして譲ってやることを強要することは、その場をうまく収めているようであっても、結果として子どもに心は育ちません。解決に時間がかかっても自分の要求を互いにぶっつけ合いながら繰り返し経験していく事で、相手の気持ちに気づいたり自分を抑えたりすることができるようになります。
そのためには、ありのままの自分を出せる環境や、大人が日頃から子どもの話を子どもの目線でじっくり聞いてやることが大切ですね。そして、危険がなければ大らかに見守ってあげましょう。(篠栗町立北勢門幼稚園 阿倍 正子 先生)