平成20年5月15日
数学者の芳沢光雄氏が、のべ700人に1万回以上じゃんけんさせた統計に基づくと、グーがでる確率は35%、パーは33%、チョキは32%だったということです。芳沢氏によると「ひたすらパーを出せば勝率は悪くない」とのこと。このグーチョキパーを出す確率、子どもたちの「じゃんけんができる」ようになる過程を表していると言えなくもありません。
生まれたばかりの赤ちゃんには、掌(てのひら)を刺激すると握り返す「把握反射」がみられます。さらに、1歳を過ぎる頃には、自分の意志で手を開いたり、閉じたりできるようになってきます。一番難しいのはチョキ。人差し指と中指をゆっくりと立てることができるようになるのは2歳の誕生日を迎える頃でしょうか。「グーチョキパーで何つくろう」の手あそびを楽しんでいる子どもたちは、じゃんけんの動作を覚え、自分でやろうとする段階にたどり着いたことになります。
しかし、掛け声と動作が同時にできるようになった3歳児の様子をみていると、儀式としてやっているだけで、だせば「勝った!」と思い込んで遊んでいることが少なくありません。じゃんけんの意味がわかり、それを様々なあそびの場面で使えるようになるのは、競争意識(勝ち敗けの理解)が芽生えたり、「~したら(じゃんけんに勝ったら・負けたら)、~する」という因果関係の理解が深まっていく4歳以降といわれています。そうした過程では、あやしあそび、まねっこあそびを通して模倣の対象となったり、一緒にあそんでくれる大人や異年齢集団の存在が欠かせません。しかし、子どもたちの生活やあそびを取り巻く環境が変化する中で、ジャンケンの意味がわからない年長さんが、幼稚園、保育所の先生方を困惑させている事例もみられるようになっています。次号以降では、あそびと子どもたちのこころとからだの育ちとの関係について、具体的に考えていきたいと思います。鐘ケ江 淳一