平成24年9月18日
年長さんのあざみ組さん。
4月のある日、「元気なきゅうりの種を届けまーす。ホカホカお布団の畑で育ててね。」と畑つくり名人のおじいちゃんから届きました。
園庭の畑を、クワで「エイ、エイ」と耕し始めました。ふらふらしつつの畑の耕しも3日目になると「エイ!エイ!」と声にも力が入り、足腰もしっかりしてきたのには驚きです。
「僕のうんち、肥しに使ってよ、おいしい野菜が出来るよ」と牛さんから手紙をもらった子どもたちは、牛さんのちょっと臭い牛糞肥料を汗びっしょりで取りに行き、畑の土に混ぜました。「うわーホカホカ畑になったよ!」「牛さん、パワー頼むよ」「きゅうりの種さん喜ぶよね、きっと!」。早速種まきをしました。「早く芽を出せきゅうりさん、出さぬと種をほじり出すぞ」と楽しみながら毎日水やりと草取りをしました。
子どもたちは、野菜を熱き眼差しで食い入るように見て、その香りを楽しみました。そして、大発見の連続の野菜育てには、ハプニングも感動もたくさんありました。
「もう少しで食べられるね。」「僕、食べたら竹馬が乗れる気がするとよね。」とワクワクドキドキ。イガイガするきゅうり5本収穫!包丁で丁寧に切ってお友達へ配り、一口食べたきゅうりの美味しかったこと。「きゅうりパワー全開!」「きゅうりさんのおかげかな。弁当早かったよ」など子どもたちの会話は盛り上がります。
2日後、「僕のきゅうりさん採らないで。だって食べたらいなくなっちゃうもん。かわいそう」と哀願するK君。そういえば水やりの時もお花が咲いたと言った時も食い入るように観察するのは、1本の決まったきゅうりの苗でした。そのきゅうりが大きくなったときK君は、収穫しようとした友達と言い合いになりました。「収穫しないで!このままにしておきたい」とK君。「だってきゅうりは大きくなったら食べたほうが喜ぶとよ」、「K君がきゅうりを食べたら糸車出来るごとなるばい」と友だち。野菜の命をいただく感謝を今回のきゅうりに限らず、二十日大根、ミニトマトなどを育て、自分たちの体の中でむくむくエネルギーになる創作童話もいっぱいしてきたつもりの私は、ちょっと戸惑いましたが、K君の願いを叶えることにしました。そこで、きゅうりにリボンを結んで収穫しない目印にしました。(でも私はこの先どうしようかなと思いましたが、K君と共に過ごしてみようと覚悟を決めました。)
きゅうりはだんだん大きくなり、少し黄色みを帯びはじめました。そんなある日、K君が畑で泣いています。「どうしたの?」他の子ども達と駆け寄ると、「きゅうりさんゴメンね。食べんでおいとったき、腐れてしもうた。やっぱり食べればよかった。ゴメンね、ゴメンね」
K君の思いに思わずK君を抱きしめました。そして 野菜の命、セミの命、桜の木の命、そして私たちの命がめぐること。お父さん、おじいちゃん、ひいじいちゃん、そのまた先のおじいちゃんからずっと命が永遠につながっていく輪廻のお話を何日もかけてクラス全員で話しました。
「えへん、私はお医者様です。このきゅうりの手術をいたします。お医者様は病気を治しますね。私にもK君が泣いていることを治せるかもしれません(担任)。」と言いつつ、まな板にあの黄色くなったK君のきゅうりを乗せました。
子どもたちは息を飲んで集中して、注目します。そして、縦真っ二つに切られたきゅうりの中には???「先生 種?種? おじいちゃんからもらったのと同じ、きゅうりの種?」とK君。「この種を蒔いたらまた芽がでる?」
「そうね もしかしたらK君は凄いことをしたみたいですね。今年とても美味しいきゅうり、エネルギーいっぱいのきゅうりを食べてみんな元気もりもりでしたね。その上、来年の赤ちゃんが生まれる種を育てたみたいですね。種まで育てたK君はすごいです。」、「やった!やった!K君ありがとう。来年も育てよう!」全員で大喜びでした。
4歳児の友達に、来年このきゅうりの種を必ずまいて育てるように熱く語った5歳児でした。
私は野菜を育てるとき苗を使わず、必ず種を蒔きます。あの小さな種が小さな地割れをしながら必死に芽が地上に生まれて出てくる情景に感動します。そして見守る子ども達の気づきや育ちの中で「命」を感じて欲しいと思っていました。
子ども達の活動の中には、素晴らしい宝石が沢山あります。
野菜作りも私たち人間の命や、動物や野菜の命や、ありとあらゆる自然界の命に気づかせてくれた活動でした。野菜作りを通して、子ども達と歌を作りました。楽しかった、好奇心が満足した、自信になった等の活動の時は楽しい歌ができるものです。