令和3年2月12日
突然ですが問題です。次の4つのうち、テストの点数が一番高いのはどれでしょう。
A 平日に学校以外で2時間以上勉強し、スマホの使用は60分以内の子どもたち
B 平日に学校以外で2時間以上勉強し、スマホの使用は4時間以上の子どもたち
C 平日に学校以外で30分以下勉強し、スマホの使用は60分以内の子どもたち
D 平日に学校以外で30分以下勉強し、スマホの使用は4時間以上の子どもたち
(H25年 学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト:仙台市、約7万人の小中学生対象。うち、中学2年生数学について表示)
1位はご想像通りA・75点。では2位は?やはり2時間以上勉強しているB?いいえ、C・64点、以下B・57点、D・48点の順です。つまり、スマホを4時間以上すると、毎日2時間以上勉強していても、スマホをしない子に負けてしまうということなのです。
さらに、勉強時間と睡眠時間をそろえて比べても、スマホの時間が増えるにつれ成績が低下するので、やはりスマホ自体の影響と考えられます。
実はこの理由はよくわかっていません。電磁波、ブルーライトなど仮説があるだけです。アプリ自体の影響という説もあります。アプリで言えば、ゲームもSNSも同じように成績を低下させますが、なかでもLINEの場合には、1時間という短時間使用でも成績の低下が明らかで、特に注意が必要とされています。色々ある仮説の中でも特に気になる、依存症の専門家から出てきた仮説について、簡単に紹介します。
具体的には、
・ネットやゲームをやめようと思ってもやめられない。
・日常生活より、ネットやゲームを優先してしまう。
(ネットやゲーム中に話しかけられるとイライラする)
・朝起きられなくて困るのに、夜、やめられない。
こんなことを依存症といいます。
ちなみに、ゲームの依存症は「ゲーム障害」として2019年5月25日にWHOにおいて疾病認定されました。
脳ではこんなことが起きています。
・前頭葉、前頭前野の障害として、キレやすい、感情的になる。
・脳内に分泌されるドーパミンの障害として、好きなこと、やりたいことがなく、やる気がないということが起こる。
そして、脳全体で考えられないという状態になります。
1.ガマンしたくてもがまんできない、2.頑張りたくても頑張れない、3.考えようとしても考えられない…「3ない人間」という表現もあるそうです。
だから、成績が下がるのではないかという仮説です。しょっちゅうスマホなどをして依存症のようになっていると、勉強していても注意が保てず、学習効率が落ちてしまいます。いくら勉強しても、教科の内容そのものへの興味や好奇心を感じることができず、単なる作業になってしまいます。それでは成績は伸びにくいはずです。
では、どうすればいいのか。小学生には、「テレビやゲーム、スマホの時間を1日合計2時間までにしてね」、中学生には「スマホは1日1時間までがおすすめ」とお願いしています。そして、私たち大人は、良い手本になりましょう。子どもは大人がしているようにします。大人に「しなさい」と言われたようにではなく。相手を真似ることで学ぶのが人間ですものね。まずは、ゲーム・スマホ以外のことに使う時間を増やす、早く寝る。前回、前々回の記事に戻って…いつでも始められます。
参考文献
1)山中憶良・倉石宗徳(2019)スマホを持たせるのは遅いほうがよい ―リアルで遊ぶ、心が通う。家庭でできるデジタル障害予防法―. 一般社団法人スポーツアカデミー.
2)アンデシュ・ハンセン(2020)スマホ脳. 新潮新書.
3)NPO法人子どもとメディア(2020)デジタル社会と小学生(中学生)~ 大丈夫?あなたのからだと心 ~[DVD].NPO法人子どもとメディア