平成31年2月18日
1.はじめに
「しつけと虐待の境目はどこですか?」とよく聞かれます。答えは、「境目はありません。なぜなら2つは異質なものだから。」です。
「しつけ」とは、子ども自身が自分の気もちや行動をコントロールできるように援助することなので安心がベースです。ところが、「虐待や暴力」というのは、伝える「やり方」が子どもを傷つける・不安がらせる・怖がらせることなので、例え教育やしつけが目的であったにせよ、「やり方」が子どもを傷つけるものであれば百害あって一利なしです。体罰は、軽微なものであっても子どもの脳に非常に悪影響を及ぼすことが、医療の研究によって明らかになりました。
じゃあ、どのように子どもをしつけたらよいのでしょうか。子どもであろうと、大人であろうと、人の心理と行動には関係性があります。正しいことを知ってさえいれば、人は正しく行動するわけではありません。注目された行為は続けようとするし、注目されなかった行為は減少します。これらは、幾つもの「ペアレントトレーニング」プログラムでも応用されています。それらの心理と行動の科学をもって子どもたちを「しつけ」ることが望ましいかかわり方です。それに、とっても楽です。
2. 子どもたちを「しつけ」る望ましいかかわり方とは
(1)日ごろから「良い関係を築く」
誰だって、信頼している人の言うことには耳を貸します。「叱り方」を研究するなんてナンセンスです。日常の中で大事にされていると感じることがあれば、子どもたちはあなたの指示に簡単に耳を貸してくれます。どんなことが子どもとの良い関係になるのかというと、「子どものおしゃべりを『へ~、そうなの?それで?なるほど~』と聞く」、あるいは「寝る前に絵本を読む」、あるいは「髪を乾かしてやる」、あるいは「子どもの鼻をかんでやる」、あるいは「手を繋いで歩く」、「いっしょにお風呂に入る」等です。できれば、嬉しそうにすると効果は抜群です。
(2)好ましい行動を見逃さない
実はこれが大事です。子どもが、「いいことをしている時には見逃してしまっている」のに、「悪いことをするとすっ飛んできて叱る」なんてついついやっちゃいます。でも悪いことをすれば、どんなに忙しい親だってすっ飛んできて自分に注目をして、時間を費やしてくれるとなれば、子どもはこれほどうれしいことはありません。だから、また同じことをしてしまうのです。これを逆手にとって、「子どもがよいことをしているところを探す」のです。例えば、部屋の中を静かに歩いている子どもに、「お部屋で静かに過ごしてくれてありがとう。」と、こんな感じです。例えば、弟に手を上げようか、どうしようかと迷っている瞬間の子どもに、「お兄ちゃん、今、我慢しようとしてたね。ママは見ていたよ。偉かったね。我慢できたね。」と、いう感じです。例えば、宿題をしている子どもと目が合った時、にっこりしてほっとさせることもよい行いに注目していることになります。だから、子どもはもっと集中力を伸ばします。
(3)ほめるためのルールづくり/ほめるためのやり直し
子どもとのルールは、「簡単なものをできるだけ少なく」しましょう。目的は叱るためではなく、ほめるためです。だから、否定文だと叱らないといけなくなるので、親も余計に大変になります。でも肯定文のルールは、ほめてあげやすいので親も楽です。例えば、「部屋の中では歩きます」。例えば「ゲームは1日30分します」なんていうのもいいですよ。ゲームをしている時に「集中してるわね。」とほめてあげられます。ふざけているわけではありません。それほど目的が大事になるのです。
(4)わかりやすい指示を出す。やってくれたら「ありがとう」
「ちゃんと」「きちんと」「しっかりと」は、子どもにはわかりにくい指示です。年齢に合わないハードルの高い指示も意地悪です。「靴は、玄関のすみに並べておいてね。」、「新聞紙は、テレビ台の下に重ねてね。」等、はっきりと指示を出しましょう。
3.おわりに
ただし、子どもに指示を出すけど保護者はやらないのであれば、それは子どものしつけにはなりません。あなたが誰かを自宅に呼ぶときだけ片づけているのであれば、子どもも人のためには一生懸命する子になるかもしれません。でも、自分たち家族のためにはやらないかもしれませんね(笑)。
いずれにしても、保護者もまた、自分に大きな期待を持たずに、「まあまあ、そこそこ、だいたい」を目指しましょう。完璧をという非現実的な期待を持つと、子どもも保護者もつらくなる一方です。大事なことは、日常の暮らしを楽しむことです。