平成18年4月29日
幼児期までは、事細かに世話をしてやらなければならなかったわが子が小学校に入学すると、親としてもほっとひと安心します。子育ても一段落、子どもはもう自分のことは自分でできるはずだという思いを抱いたりします。
しかし、実際には「小学生になったから」「高学年になったから」今までできなかったことが突然できるようになるというわけではありません。「自分のことは自分で」本当にできるようになるためには、親が必要に応じてやり方をきちんと教えてやることが、この時期は大切です。子どもは体験したことのない、教えられたことのないことはわからないのです。そして、少しずつ自分でできるようになったら「自分ですること」に対し、「自分で責任を持つ」子にしましょう。
例えば、1年生では翌日の学習の準備をする場合、最初は親が傍らについてやり方をきちんと教え、子ども自身にさせてください。そして上手にできたらしっかりほめてやってください。親が準備を全部してやると、子どもは忘れ物をすることもなく簡単ですが、それではいつまでたっても「自分のことは自分で」できる子にはなりません。それどころか、忘れ物があったときにそれが親の責任になってしまいます。私が小学校の教師をしていた時、忘れ物を届けに来て「ごめんね」と子どもに謝っていたお母さんがいました。その子は、お母さんに「ありがとう」と言うどころか文句を言っていました。また、調理実習の時「卵が入ってなかった!」と親に電話をかけて文句を言っている6年生もいました。忘れ物をしないようにすることはもちろん大切ですが、万が一忘れてしまったときは、親や他人のせいにするのではなく、自分の問題として受け止め、適切に対処できる子どもにしたいものです。
学童期は一人前の「自立した大人」になるためのまさに「基礎」が完成する、とても重要な時期です。子どもはこの時期「自分のことは自分でしようとする心」を潜在的にもっています。むやみに手を出すのではなく、教えることは「教え」、あとは「任せ」、温かく「見守ってやる」親としての細かな気配りや配慮が必要になってきます。
学校生活にも少し慣れてきて、忘れ物が多くなるこの時期、翌日の持ち物の準備という小さな事柄も、親のあり方によっては子どもの「自立」に向けての大きなきっかけになることです。子どもが忘れ物をしたのに気付き、届けてやった時、「お母さん、ありがとう!」という言葉が聞けたらいいですね。