叱るときは「本人」ではなく『行動』を!

平成28年1月16日

私は、12年前に子どもの遊び場を開設し、子どもたちと放課後を毎日遊び過ごしてきました。十人十色の子どもとの出会いは非常に魅力的なのですが、その関わりについては試行錯誤の連続でした。特に「叱ること」と「褒めること」。ともすれば信頼関係を損ないかねず、それはもう奮闘の日々。それでも、その経験値に心理学の知見が加わることで、今では次の道標を得ました。それは、叱るときは「本人」ではなく『行動』を叱るということ、褒めるときは「結果」ではなく『過程』を褒めるということです。(今月は「叱ること」に焦点を当てます)

例えば、ある子どもが友達を叩いてしまったとします。つい「叩いたあなたが悪い」と叱責してしまいたくなるのですが、その子自身を叱ると、自己肯定感も下がりますし、実は本人自身もその解決策がわかりづらいのです。あくまで叱るのは、叩いたという『行動』に対して。その行動を再び生じさせないことが大切ですし、子どももそこに解決策を見出すことができます。それなのに「本人」を叱ることで「叩いたあなたのことが嫌い」ということが意図せずに伝わってしまうと、それは双方にとって悲しいことです。

叱られた後、子どもから近寄ってくることはありませんか。それはきっと、自分自身が否定されたのではないかと不安になって確認しようとする作業でしょう。そういうときには、あなた自身のことは変わらず好きであるというメッセージを全身で伝えてみませんか。私自身も、子どもを叱った後は常にその子の視界に入り、その子が近寄るきっかけを、言い換えればこちらのメッセージを伝えるきっかけを、意図してつくったものです。

叱られたにも関わらず、わざとまた叱られるような行動をとることもあるかもしれません。そのような“試し行動”を通して、信頼関係を測り直しているとも言えるでしょう。そういうときも、その子ども自身を否定することなく、行動に対しての善悪をきちんと伝えていくことが重要ではないでしょうか。

かつて遊び場で一緒に遊んでいた子どもたちも、今は大学生となり、そのうち数名が遊び場のスタッフとしてやってくるようになりました。当時の思い出を語る中で、ある男の子がポロッと一言。「よく叱られたのを覚えている。でも、愛のある叱り方だったから、また遊びに行こうと思えた」。そんな関わりを、これからも大切にしたいものです。そして、そのことを教えてくれた彼らにも感謝です。

 

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