②生きる力を育む「キャンプ」

平成29年1月31日

子どもたちの「生きる力」を育むためには、自然や社会の現実に触れる実際の体験が必要不可欠と言われています。従来、キャンプを中心とした自然体験活動は社会性や自主性の改善に一定の効果があるものとみなされ、盛んに実施されています。

以前、私が関わった不登校の悩みを抱える子どもたちの「キャンプ」で、子どもたちがどのような体験をしているか紹介したいと思います。困難克服体験として登山を行った時のことです。 登り始めてすぐに「これって何の意味があるん、意味ないじゃん、やめようや」と言う言葉が発せられました。登る前に「登山をやりとげよう」と言う目標を掲げ、具体的には「バディ(※注釈)ではげまし合って山を歩こう」、「みんなでペースをあわせよう」、「最後まで歩き通そう」ということを確認して登り始めました。きっと自然の中に身を置いた時のワクワクする気持ちやロープで登ったりするアドベンチャー的な要素の楽しさよりもきつさが先に出てしまい、このような言葉になったのでしょう。

壁を乗り越えようとするとき、ネガティブな考え方や言葉は自分にも周りの人にも弊害となります。本人にとっては何の気なしに発した言葉が、周りの人に多かれ少なかれ影響を与えていることを理解する機会となりました。しかし、一度出発すると何を言おうが自分の足で進まなければ前に進むことはできないし、終わることもできないので面白いのです。登山は自らの意思によって「頑張る」ことを教えることができる体験プログラムとなりました。

また、登山中に捻挫する子どもが出たというアクシデントもあり、スタッフの迅速な対応、そして何よりも同じ班の仲間が自分の荷物を持ってくれたという体験は、不安の中で人の優しさが心に響いたのではないでしょうか。もちろん、登り終えた時の達成感は、何物にも代えられないものがあったに違いありません。

このように、体験する中で子どもたちは葛藤しながら様々なことを感じ、周りの仲間によって助けられながらやり遂げるということを学んでいきます。そのプロセスに教育的意義があると言えるのではないでしょうか?

体験活動とは、文字どおり、自分の身体を通して実地経験する活動のことであり、子どもたちがいわば身体全体で対象に働きかけ、関わっていく活動のことです。また、体験活動は、豊かな人間性、自ら学び、自ら考える力などの「生きる力」の基盤や子どもの成長の糧としての役割が期待されています。つまり、思考や実践の出発点、あるいは基盤として、また、思考や知識を働かせ、実践して、よりよい生活を創り出していくために体験が必要なのです。

みなさん、どうですか?今年の夏はキャンプデビューしてみては?

※ バディ;二人組の一方。また、なかま。相棒。(広辞苑より)

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