ふくおか子育てパーク

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2009年11月24日

第4話 絵本を今の子ども達と未来につなげて(浦塘 直実/うらとも なおみ)

 「絵本」は、読み手と聞き手の心を通わせるすてきな物です。それは、様々な「絆」を築いていくことでもあります。私は、これまで多くの子ども達と出会い、「絵本」で楽しいひとときを過ごさせていただきました。その中の一つに「劇あそび」があります。
 今の時期は、各幼稚園や保育所等でも、お遊戯会やクリスマス会などの準備が行われている季節ですね。私は、こうした行事の際に、いつも読み聞かせをしている絵本の中から、お話を選び、それを台本に起こして「劇あそび」を行ってきました。保育材料などでプロが構成した台本を使うこともありましたが、架空の人物などが出て来る場合もあり、日頃子ども達に読み聞かせをしていく中で、物語に入り込んで疑似体験を楽しんでいるせっかくの気持ちを損ねてしまう気がしていましたので、自ら台本を作成することにしていました。
 「台本を作るって大変でしょう」と言われることもありましたが、それが結構楽しいんです。子ども達一人一人を思い浮かべながら○○ちゃんだったら、こんな感じでセリフを言ってくれるかなぁ…。○○くんには、この人物にチャレンジしてもらおうかなぁ〜などなど頭の中で、子ども達が演じている様子が浮かんできます。〜自称:田川の橋田寿賀子です〜なんて周囲を笑わせてもいました。脚本家のみなさんもこんな感じで沢山イメージをふくらませているんだろうなぁ…と思ったりして、1話でお話しました「Weddingで絵本を」に登場してもらいました花嫁とタッグを組んで毎回楽しみながら厚生を考えていきました。彼女は、衣装デザイナー担当です。とってもかわいい衣装をいつも工夫に工夫を重ねながら考えてくれました。それぞれ得意な分野を生かしていたんです。
「ぐるんぱのようちえん」(西内みなみ/さく・堀内誠一/え・《こどものとも》傑作集/福音館書店) 私達が楽しみながら考えた「劇あそび」は、やはり子ども達も喜んで参加してくれました。昨年、教諭生活最後の作品となりました「ぐるんぱのようちえん」(西内みなみ/さく・堀内誠一/え・《こどものとも傑作集》/福音館書店)を、オペレッタ形式で台本を作りました。子ども達がハリキッて演じましたし、見に来られた保護者の方々も楽しく見ていただいたようです。
 いつも読み聞かせている「絵本」から劇遊びにすることには、理由がいくつかあります。それは、先ほども触れましたが、子ども達が物語を知りつくしているからこそ、無理なく入っていけて演じることが出来ること。あとはクラスの一体感等々ありますが、保護者の方に「絵本」の楽しさやすばらしさを伝えたいという意図がありました。今回は「〜の絵本で劇あそびをします」ということを伝えると、その「絵本」に興味や関心を持って下さいます。例えば、お家にその絵本がない場合は、図書館から借りて来るとか、または、絵本を買ったなどという声が聞かれます。「絵本」をとても身近に感じてくれたという表れであり、手に取ってみようというキッカケにもなるようです。「ぐるんぱのようちえん」の劇に関して言えば、「クリスマスのプレゼントにこの絵本を贈る予定です」と、こっそり教えて下さったお母様がいらっしゃいました。この絵本が手元に届いたときのことを思い浮かべただけで、わくわくしたものです。
 私は今、絵本講師という立場で「絵本で子育て」という主旨の元に読み聞かせの大切さや子ども達に「絵本」を読んであげましょうというお話をさせていただいていますが、それにはまず、大人が「絵本」を手に取って開いてみよう、読んでみようと思っていただかないと、子ども達には届けてはもらえません。昨今、子どもの本離れが問題視されていますが、それはやはり「大人」の問題ではないでしょうか? 大人が何らかの形で「絵本」や「本」を橋渡ししてあげて、楽しさやすばらしさを伝えていかなければ、子ども達は自ら「本」を手に取ることよりも、刺激いっぱいの電子メディアに心をうばわれてしまうことは仕方ないことなのでは、と考えてしまいます。
 今、子ども達に「絵本」を読んであげるということは、また次の世代へと橋をつなげていることと同じことなんです。子ども達自身は、自分が育ったように次の世代へと導いていくものです。ですから、今の子ども達に「絵本」の読み聞かせをするということは、未来につながっていくかと思うと、すごくわくわくしませんか?すてきな事だなぁ〜と思います。
 皆さん、是非お子さんと「絵本」を囲んで、心豊かな子育てを楽しんで下さい。私は、こうした自分の体験、並びにエピソードをお話することで、子ども達に「絵本」や「本」を届けてもらえるように発信していけたらと思いますし、ご希望がありましたら「絵本講座」を開きに伺いますので、一緒に絵本の楽しさやすばらしさをわかち合うことが出来たら嬉しいです。
 これまで、計4回に渡り、読んで下さいました皆様ありがとうございました。心より感謝致します。

(NPO法人「絵本で子育て」センター 絵本講師 浦塘 直実/うらとも なおみ)

投稿者 Kosodate : 10:30 | コメント (6)

2009年11月16日

第3話 パパも読み聞かせしてみましょう(浦塘 直実/うらとも なおみ)

 9月にイイヅカコスモスコモンで、青少年アンビシャス運動推進フェスティバルが開催されました。その際、私達NPO法人「絵本で子育て」センターの絵本講師も「読み聞かせ」のコーナーと「絵本講座」に参加しました。
 「読み聞かせ」コーナーでは、絵本講師が分散して、参加されている親子に読み聞かせを行う形式を取りました。私の前には、以前勤めていた幼稚園の親子が座って下さり、久々の再会を懐しみながら、絵本の読み聞かせを進めていきました。2,3冊読んだ頃でしょうか。「次の本はどれがいい?」と一番下の女の子に絵本を選んでもらうように見せていると、お父様が「○○ちゃんは『11ぴきのねこ』(馬場のぼる/こぐま社)が好きでしょう。」とおっしゃいました。『11ぴきのねこ』(馬場のぼる作/こぐま社刊)
 私は、お父様がお子さんの好きな絵本を知っていることに驚きました。このご家庭には、絵本が沢山あります。3人のお嬢さんは、沢山の絵本を読んでいただいているので、色々なお話を知っているのはもちろんのこと、情緒豊かで、伸々と育っていらっしゃいます。
 絵本を読み聞かせてもらうというのは、子育てにこうも影響するのだなぁと、幼稚園教諭の時分にはよく思っていました。そして、てっきりお母様のみが読み聞かせをしていらっしゃるのだとばかり思いこんでいたのです。しかし、お父様の言葉を聞いて、これはきっとお母様がお子さんに読み聞かせをしているときに一緒に聞いていらっしゃるか、または、お父様自身が読み聞かせをしていらっしゃるかに違いない。そうでないと、お父様がお子さんの好きな絵本を知っているというのはなかなかないことではないかと思ったのです。その後、お母様にこの事をたずねてみました。そうしたら、「そうなんですよ。主人も読み聞かせをするんです。特に、上の子のときは主人が主に読み聞かせをしていました。」とおっしゃいましたので、とっても感激しました!! お父様が読み聞かせをするなんて、なんてすてきなんでしょう!!
 特に、お嬢さん3人は異性ですから、小さい頃の父親との関係は、こうした日常の何気ない場面でしっかりと親子の絆を深め合っているということや、これから思春期を迎えるにあたり、父親の存在が少々わずらわしい年齢になってきたときでも、幼い頃のこうした父親との体験は、何にも変えられない愛情の深さを感じてくれるはずだと思います。最近、ある小学校で講演をした際に、保護者のお母様から「病気のときに父親から本を読んでもらったことが心に残っています。その本を大人になって夏目漱石だということが分かって、再会したときに更に感動しました。」とお話して下さいました。

 「絵本」や「本」を読んでもらうということは、ずっと心の中に刻まれていくものであり、ある時ふと思い出して親の愛情を感じてみたり、かけがえのないひとときを共に過ごしてくれたという感謝の心が、その人の生きていく上での糧となり力となっていくのでしょう。
 世のお父様、今からでも遅くありませんよ。お子さんとのこうしたひととき「絵本」を媒体にしっかり親子の絆を深めてみてはいかがでしょうか。

 もう一つのお話。今4人目のお子さん(1才6ヶ月)に絵本の読み聞かせをしていらっしゃるお母様が私にこんなお話をして下さいました。「上の子のときは忙しくて、絵本を読んであげるゆとりがありませんでしたが、今ようやく下の子になって、そのゆとりが出来ました。けれど上の子(小学4年生と年長さん)には、してあげられなかったことが、申し訳なくて…。」とおっしゃいました。一番下のお子さんの誕生は皆でとても喜んだそうで、日頃もお世話をたくさんしてくれているとか。「では、お母様が下のお子さんに絵本を読んでいるときは、上の2人はどうしているのですか?」とたずねてみると、「一緒に聞いてくれます。」とおっしゃるので、「それだったら、上の2人に読んであげているのと同じですよ。2人は喜んで見ているのでしょう。」と言うと、「よかった!!」とおっしゃってくれました。下のお子さんが、上の2人のお子さんに、いいキッカケを作ってあげたのでしょうね。読み聞かせは、いつから始めてもいいと思います。決して遅いなんてありません。思い立ったら始めてみて下さい。おひざに抱っこしてね。

(NPO法人「絵本で子育て」センター 絵本講師 浦塘 直実/うらとも なおみ)

投稿者 Kosodate : 09:15 | コメント (6)

2009年11月11日

第2話 心に残る一冊 (浦塘 直実/うらとも なおみ)

 絵本講師としていろいろな方にお会いしたり、それまで幼稚園の先生という立場でお付き合いさせていただいていた方々から、「絵本」や「本」に関する様々なエピソードをお聞きする機会に恵まれています。
 その中で、“心に残る一冊”というのをどなたもお持ちであるということを知りました。
あるお母さまは、ご自身が子どもの頃に読んだ一冊の本に心を動かされたことで、お子さん二人にも「本」がもたらす心豊かな喜びを伝えたいと小さい頃より絵本の読み聞かせをなさってきたそうです。
そのお子さんも、今はたくさんの本を読んでいらっしゃるとか。

 また、ある男性は中学生の頃に国語の教科書に載っていた一節がずっと心に残っていて、その後の人生の座右の銘になるぐらい魅了したことばだったようです。そして、誰の作品か作品全体を読み返してみたい!という気持ちが、何十年もの間くすぶっていて、やっと図書館で作品名を知り再会したことを“最愛の恋人との再会を彷彿させるものだった”と語ってくださいました。とてもロマンチックなお話だと思いませんか。

 最近は、こんなお話も伺いました。小さなお子さんがいらっしゃるお母さまで、絵本の話をしながら、いつしか自分達の子どもの頃の絵本へと話題が移っていきました。すると、「実は私は母子家庭で育ちました。母は『あなたが大きくなって結婚するときに、何もしてやれないかもしれないけど、この絵本のセットをお嫁入り道具に持っていってね』と買ってくれたんです。その絵本のセットは結婚するときに持ってきました。今でもずっと大事にしているんですよ。」と。心あたたまるお話に熱いものが込み上げてくる思いでした。
 すてきなお話の数々に「本」にまつわる心豊かな人生を垣間見た気がします。

「もりたろうさんのじどうしゃ」(ぶん・おおいし まこと/え・きただ たくし/ポプラ社) 私はといいますと・・・小さい頃に母親からたくさんの絵本読んでもらったことがすごく心に残っています。大好きだった絵本は“もりたろうさんシリーズ”です。「もりたろうさんのじどうしゃ」「もりたろうさんのひこうき」(ぶん・おおいし まこと/え・きただ たくし/ポプラ社)に大人になって再会したときに、なんとも言えない懐かしさに、まるで小さい頃にタイムスリップしたような心躍る気持ちになりました。

 そして、更に記憶をたどっていくと見えてくる一冊、それは「フランダースの犬」でした。最初に読んでもらったときのある一部分だけよく覚えているのです。母は、いつものように私に読み進めていきました。しかし、突然涙声になったのです。私は、どうして泣いているのかよくわかりませんでした。ただただ驚くばかり。
「どうして泣いているの?」とたずねると「だって悲しくて・・・」と声を詰まらせました。
幼心に『悲しい』という気持ちはこういうことかなぁ〜と衝撃的なひと時と記憶しています。
その母も亡くなり、今はこうして幼い頃にいつも一緒にいて、たくさんの物語に出会うきっかけを作ってくれたことにとても感謝しています。

 心に残る一冊や思い出があるということは、生きる糧にもなるということや優しさを育んでいくものだと思います。皆さんにもきっとあるはずです。心に残る一冊が。
日頃は忙しさに忘れてしまっているかもしれません。思い起こしてみてください。それとも、これから心に残る一冊と巡り合うのかもしれませんね。

(NPO法人「絵本で子育て」センター 絵本講師 浦塘 直実/うらとも なおみ)

投稿者 Kosodate : 11:20 | コメント (8)

2009年11月04日

第1話 Weddingで絵本を (浦塘 直実/うらとも なおみ)

Weddingで絵本を

 初めまして、 NPO法人「絵本で子育て」センター 絵本講師の浦塘です。どうぞよろしくお願いします。
私の以前の職業は、保育士・幼稚園教諭で、約21年幼児教育に携わってきました。
これまで、数えきれないくらいの子ども達に絵本の読み聞かせをしたり、絵本を題材に劇あそびをしたりなど絵本がもたらす喜びを共に楽しんだり、わかち合う経験をたくさんしました。
そんな私も昨年、幼児教育の現場を離れて、もっと多くの人に「絵本」のすばらしさを伝えたいなぁと思うようになっていた頃、素敵な出来事がありましたので、ご紹介します。

 8月に仲良しの同僚が結婚することになり、披露宴のご招待を受けました。
その席で、スピーチをして欲しいということで、喜んで引き受けたのです。スピーチ文を考えていると、「しろいうさぎとくろいうさぎ」(ガース・ウィリアムズ ぶん・え/まつおかきょうこ やく/福音館書店)の絵本が頭をよぎってきました。

「しろいうさぎとくろいうさぎ」(ガース・ウィリアムズ ぶん・え/まつおかきょうこ やく/福音館書店)

 この絵本は、世界中で50年物間読み継がれてきた愛の絵物語です。まだ保育士になり始めの頃たくさんの絵本や絵本について知っている先生から「この絵本は結婚のお祝いに贈ってもいいのよ」と聞いたことを思い出したのです。絵本が大好きな彼女に贈ろうかなぁ〜〜〜と思ったのですが、ふと、「読み聞かせ」をして贈ったら、心に残ってくれる一冊になるかもしれないと考えて、スピーチの中にこの絵本の一部を読み聞かせして贈ることにしました。もちろん内緒で・・・・・

 当日、アットホームな中で披露宴が開催され、いよいよ私の出番となりました。スピーチもさることながら、この絵本の読み聞かせ部分は、ちょうど物語のクライマックスの大切な部分、主役のお二人に伝わってくれるよう願いながら、心を込めて読みました。そして、無事にスピーチが終えプレゼントできました。
「一生の思い出になりました!」と喜んでもらえて、とってもとっても嬉しく、私自身も幸せな気持ちでした。しかし、その後予想外の展開がありました!!
ご出席されていた方から直接感想をいただいたのです。
「忘れかけていたことを思い起こさせてもらいました」「今度手にとって読んでみます」などなど。
子育て中の男性からは「幼児教育について語りましょう」と、若い方から年輩の方まで・・・。
主役のお二人だけでなく ほかの方までもが「絵本」からの素敵なメッセージを受け取ってくださったんだなぁと思うととても感激しました。

 これまで、子ども達への読み聞かせは日常でしたが、大人の方に向けては初めてのことだったので、改めて「絵本」のすばらしさや魅力を感じました。この経験を経て今の私があります。
絵本は子どものための、特に幼児のための本と思われがちですが、そうではありません。子どもの心にも大人の心にも響くメッセージがたくさん込められています。
大人は、これまでの人生経験を通して、自分に当てはめながら「絵本」を読み取ることが出来ますし、子どもの読み聞かせでは、大人では感じ得ない新鮮な感覚やたくさんの発見が子どもも大人も心を豊かにしてくれます。
 まずは、手にとって読んでみませんか?なるほど大人も感動したり楽しめるなという一冊がきっとあるはずです。その感動を、今度は子ども達に伝えてほしいです。
「絵本」は子どもと大人をつなぐ心の架け橋なのです。

(NPO法人「絵本で子育て」センター 絵本講師 浦塘 直実/うらとも なおみ) 

投稿者 Kosodate : 15:30 | コメント (8)

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